第36話 serment
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が一人で苦しんでいるのを知って...黙って見ぬ振りするなんて私にはできません!」
「花陽....」
笹倉大地はこれまでの人生で何度も大変なことを経験していることを小泉花陽はなんとなく予想していた。ただしそれは、例えて言うなら”町中のケンカの延長線上にある”ようなものだと、思っている。
過去に一度だけ、同じメンバーの希が不良たちに襲われかけたことを、花陽と凛がそのメンバーに襲われたことを知っていたが、あれはまさに人生一度の出来事だと思いっていた。
まさかこんな.....”記憶を失うほど”の大きな問題を抱えた人生を送ってきただなんて、誰に想像できただろう。
(記憶...喪失)
こんな風に精神を削っていくような毎日を過ごしていればいつ壊れてもおかしくない。
記憶喪失の原因が精神的なショックなのか、それとも脳の構造的な問題なのかは花陽にはわからない。だが、そのどちらの原因であっても『壊れる』と、思えてしまう。
それぐらいに、きっと笹倉大地は追い詰められていたんだと花陽は思う。
しかもそれを誰かに語ることなく一人でだんまりを決め込んでもがき苦しむ彼はあまりにも目も当てられない情を感じさせた。
”未遥”という少女が何故彼の”記憶喪失”を知っていたかなんてこの際置いといて、花陽の耳には”未遥”がソレを本人の前で告げた時の彼の悲痛な呻き声のみがずっとリピートしている。
───大地くんが記憶を無くしてるってこと、知ってるの?
助けるべきだ、と花陽は思う。
今にも心が引き裂かれそうな大地の、頭の中の記憶を失うほどの経験をして、それでも誰にも告げずにみんなに悟られまいと、至って普通の高校生活を送ろうとする先輩のことを。
「.....?」
大地は言葉を発さない花陽を、不思議そうな目で見ていた。
花陽が一体何を考えているのか、全く理解していない顔。
他人に心配かけさせるような事は全部内緒にしているから、誰かに声をかけてもらうようなことは絶対にありえないと誰かに悩み事を相談して一緒に解決しようなんて都合のいいことなんて許されるわけないと、心底そう思っている顔。
そんな彼を見ていると心配で、それでもって相談してくれないことに対して僅かながら苛立ちを彼女は感じていた。あの花陽が...いつもオドオドしていて後ろからついてくる彼女が。
大地に怒りを覚えている。
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