第36話 serment
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「え?」
「どうして...大地さんは、黙ってたんですか?」
少年の質問に質問で返す花陽。
ーーー黙っていた...つまり、きっとそういうことを言いたいのだろう...。
ゴクリと大地の喉を鳴らす音が異様に大きく聞こえる。
「...何をだ?」
「大地さんも、わかってるはずです。私たちに何を隠しているのかなんて。どうしてですか?私たちに気を遣って、優しくしてくれて...お人よしの大地さんが、記憶喪失だなんて...」
「......やっぱり、あの会話は聞いてたんだな。」
こくりと無言で頷く。
正直、大地の記憶喪失を黙っていたことでここまで誰かを苦しめることになるとは想像できていなかった。
あくまでこれは彼自身の問題であり、彼女たちには関係ない、踏み入れさせてはならない領域だと思い込んでいた。
だけどその結果、コーティングしていたところから徐々に綻びが生じ、脆い部分が剥がれ落ち、誰かを傷付ける結果を生み出してしまった。
───浅はかだった。
もっとよく物事を考えておくべきだった。そうすれば花陽は普通の日常を送ることができたはずなのに.....
花陽が涙を目尻に溜めてこくりと頷く頃にはもう既に階段を上りきり、彼女と対等の位置に立つ。
「大地さん。大地さんは何をしているのですか?」
「なんだって?」
彼は慌てて聞き返す。普段の彼女とは思えない”強い”感情が見えた。彼女は日常的に”アイドル”や”お米”の時にテンションが上がることを笹倉やμ‘sのみんなは知っているし、彼にとってもみんなにとっても見慣れたものだ。
ツッコミや笑うことはあっても”焦燥”のような気持ちを感じることは珍しい。いや、初めてだ。
だが、今の彼は、いつもの感情パターンから外れざるを得ない状況に直面していた。
彼女の目が、表情が明らかに変わったように思えたからだ。
”怒り”とはちがう.....心配してるけど、その中に複雑な想いがあるように思える。
すると突然彼女は言い出した。
「なんで私たちに話してくれなかったんですか?そんなに私たちが頼りないんですか?確かに昔の大地さんの出来事なんてわかりませんし、話したところで私にどうこうできるなんて思えません。でも、そんなに大切なことを知って.....大地さん
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