幕間1
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暢介の言葉に久遠は反応を示せない。
もしも、久遠が普通に話せるならば。
『大丈夫じゃないよ!』
と、返答していた事だろう。
「と、兎に角、部屋に入って」
そう言って暢介は久遠を部屋の中に入れた。
部屋に通した後も、時折落ちる雷にビクッと反応を示す久遠。
しかし、ある程度観察していると多少の違いが見える。
(どうやら、久遠が反応を示すのは近い距離か……思えば雷、結構近い位置で落ちてるからな)
無言のままの久遠をこのままにしておく訳にはいかない。
そもそも、何とかしないと暢介自身も寝れない訳だが。
「久遠、正直に言ってくれ。雷が駄目なんだろ」
暢介の言葉に力無く首を縦に振る久遠。
「どうしてそうなったかは聞かないけど、今日は……」
そこまで暢介が言ったところで、2人の目の前が明るくなったと思った瞬間。
雷が落ちる音が響き渡った。
同時に久遠が椅子から飛びあがって暢介に抱きついてきた。
「お、おい久遠」
焦る暢介だったが、怯えの度合いが先ほど以上になっている久遠に焦りは無くなる。
落ち着かせる為、暢介は久遠の背中を擦る。
真美が雷で怖がっていた時もやっていた事で、彼女はそれで落ち着いた。
しかし、久遠にも同様の効果があるかは不明ではあったが。
しばらくすると久遠の身体の震えが落ち着いてきたのが分かった。
『これは、雷を怖がっている理由を聞いた方がいいな』
そう考え、暢介は落ち着いてきている久遠に尋ねる。
「久遠。雷が駄目な理由を教えてくれないか?」
もう一度、近い距離で雷が落ちる前にと付け加えて。
誰かと話をしていて、ごく稀に。
自らの予想を超える回答が来る場合はある。
今回の場合、暢介は久遠が雷に恐怖心を持っている理由は。
妹である真美と同じ様に、目の前で雷が落ちた事によるものだろうと思っていた。
そして、久遠の話を聞き。
その考えが半分正解はしていた。
残りの半分が暢介の予想外の回答であった。
『まさか……雷が目の前の人を直撃したとはな……そりゃあ、トラウマになるわな』
幼い子の目の前で例え、知らない人でもその人が雷に打たれて亡くなったのを見てしまえば。
雷というものへの恐怖心は芽生えるだろう。
「昔は、雷の音だけでも駄目だったんだけど。今は遠くのは何とか我慢出来るんだけど……」
近くに落ちる雷には、どうにもならないらしい。
まぁ、そこまで克服してるのも凄い事なんだろうけども。
そう思った所で、暢介は欠伸をする。
どうもここに来て眠気が襲ってきているようだ。
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