幕間1
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近い位置で雷が落ちる。
その音に思わず……
「うおっ!」
「きゃっ!」
暢介と久遠は声をあげる。
ここはある街の宿。
2人が宿に入った途端、天候が悪化し雨が降り出した。
宿の中にあった食堂で食事をしている最中に雷が落ち。
最初の2人の悲鳴に繋がる。
「結構近かったな今の」
落ち着いた感じで話す暢介。
ちなみに、彼は雷だったり台風だったりといった。
荒れる天気が苦手という訳でない。
「……」
逆に久遠の方は、完全に動きを止めていた。
少し表情に恐怖が浮かんでいる。
「どうした久遠?」
「……な、何でもありません」
「……ひょっとして久遠。雷が駄目な……」
暢介がそこまで言うと、久遠は席を立ち。
「そ、そんな訳ないでしょ。ぼ、僕、もう寝るから」
そう言って食堂から出て行ってしまった。
「……そんな反応返されたら……バレバレだって」
苦笑しながら暢介はそう呟いた。
食堂で聞いた時よりは少し遠いが雷が落ちる音が聞こえる。
雨足も強まっており、窓に叩きつける雨が勢いを増している。
「……学生の頃だったら、部活休みだぁって喜んでるな俺」
そう笑みを浮かべながら呟く暢介。
「そういえば、久遠の奴。雷が駄目な様だったな……真美と同じか」
暢介の妹、真美も雷が苦手だった。
幼少期の旅行で、目の前で雷が落ちたのがトラウマとなり。
今でも雷が落ちると身体が固まってしまう。
近くに落ちると腰が抜けてしまい、その場にへたりこんでしまう。
「一人じゃ寝れないからって俺だったり、両親の布団に入りこんだりしてたもんな……」
そこまでいい、暢介は欠伸をする。
眠気もきており、この感じならすぐに眠りに入れるようだ。
「さて寝るとするかな……この様子じゃ雨が続きそうだけど、晴れたら移動しなきゃいけないしな」
寝台に入り目を閉じる暢介。
時折聞こえる雷の音も窓に叩きつける雨音も気にならなくなってきた頃。
ドアが叩かれる音が聞こえた。
「……ん? 誰だ?」
丁度眠りに落ちる所での邪魔だったので暢介は少し不機嫌な声を出す。
この状況下で、暢介の部屋を訪ねる人間は限られているのだが……
「よ、暢介。起きてる?」
「……久遠?」
声の主、久遠の声に暢介は寝台から出るとドアに近づく。
そしてドアを開けると、久遠が少し震えながら立っていた。
雷が苦手だろうと思っていた暢介であったが、今の久遠の姿は予想外だった。
「だ、大丈夫か? 久遠」
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