弟十八話「山越え」
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朝方、小鳥がさえずりタチカゼは出発の時を迎えた。
「よいか賢者は一人ではないし、人間の形をしてるばかりではない、よく探し、よく見いだせ」
「さて、それでじゃが話は最近のことになる、どうもこの先の山から流れる川に毒を流しているやからがいるようだ。悪しきものじゃ、山のふもとの反対側にアルウェルンという国がある。手始めにここから助けに加わるとよいだろう。山には恐ろしい邪悪で古い化け物がおる。山を渡るには危険だが越えなければ王国にはつかない。それがわしには黒く澱んだ恐ろしい存在として見える。どくをながしているのはその手下だろう。オークぐらいなら剣でも相手できるがこいつは杖持つ者が必要だろう。わたしにはその存在は、いまだに身の内に神聖なる光を宿している。人間の姿をしているがわたしには光り輝く存在にみえる、そのものは森にいて知恵ある歩く木たちを友としておる。そのくらいじゃ、それ以上は隠れ潜んでおって動向が読めん」
「ありがとうございます、これでやっと動き出せます」
「太陽の出るとき動け、でないと悪しき者たちはここぞと攻めてくる。そうじゃな、ミリル、おるかい」
「はい、おばあさま」
「おまえ、この方をアルウェルンまで送っていきなさい、私の弓矢をもっていくがいい、それから川の水を汲んで持っておゆき、もし夜襲われたらそれを周りに巻きなさい結界になる」
送っていくそれはもう帰ることができないという意味でもある。山向こうとこっちではなにもかも違う。
ミリルはエルフかと思うほど美しい西の国の美女だった、その肌は白く髪は黄金色。目は碧眼。
「ウラヤ殿」
「おお、タチカゼどの、元気での一ついっておくが・・・・・・」
「はい?」
「手は出さんほうがいい、あれにはいいなずけがおる」
「ははあ、それは心配には及びません、わたしにも故郷にのこしてきたいいなずけがいますので」
「ほっほ」
タチカゼはウラヤの館を出発した。
「どうでした?」
「いや、いささか、くぎを刺されましてね」
くすっとミリルは笑う。
荒野を飛ぶように走る馬は天馬のことを思い出すがあれは今の自分に荷が勝ちすぎてるとタチカゼは感じていた。
「天馬は使うまい。あれでは敵に知られやすい。オークの目は夜でもよく光る」
「ここから三つの月がかわるくらいでアルウェルンの町です。気をつけてください、そこらじゅうに山の手勢がいます」
「それなんだがアルウェルンの長はどんな人物かね?」
「良く言えば厳格、悪く言えば頑迷ですね」
「ふむ、それはあまりよい待遇はきたいできないな。まあ、義勇兵として志願してみるか、だがこの街道はすこし地形がよくない、夜があぶ
ないかもしれない」
「あの向うに見えて
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