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剣風覇伝
第十七話「ヨツゥンヘイムの白き賢者」
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メレオルは、焦っていた。自分の預言からこの世界の希望となるべき人間を東のある村に見出した。

そこまでは良かった。しかし、これを王に伝えたのが良くなかった。王は、あろうことかその村に王国への呼び出しの手紙を送ったというのだ。

メレオル、そうこのヨトゥンヘイムに響き渡る、全ての人間の中で最も賢く、そして美しい女にして全世界にさえ影響を与える魔力の持ち主。その知識は、世界樹のように広がり聳え立つようだ。

そのメレオルが、判断を誤った。いや、そういわせればそうともいえるが、メレオル自身、その占いの答えに迷いがあったのだ。この東方の村の一青年が本当にあの暗き闇の王を倒せるか、少なくとも魔族たちとの戦いによって彼自身が成長していかなければならない。

だから、王が村に手紙を出したというのも、遺憾ではあったが、その道中で、自分の力に目覚めてくれればという思いもあったのだ。

だが、彼の消息は、町の人間全てがヴァンパイアになった噂のある町で途絶えた。

そして、メレオルは、国の防衛を一番弟子であるアルテミリアに任せた。アルテミリアはメレオルがどこまでも白く輝く美しさを持つ女性ならアルテミリアは赤く艶やかに咲く美しさを持つ女性であるといえる。やはり魔力を持った者というのは自然と容貌も美しさを帯びるものなのだろう。メレオルはそのアルテミリアに国の自分の役職を受けつがせ、もう眼前にまで来ている魔族の軍勢に一人で赴き、その杖の威力を示した。

メレオルが杖を構えると魔族の軍勢は、白い光に包まれて、辺りからどこからともなく現れた銀の霧の中に埋もれてしまった。そして霧が晴れると同時に魔族の軍勢はちょうど軍勢の三分の一がそこで死に絶え、あとの三分の二は、危険を察知して退却していた。

「ふう、これで、あと三年は、このヨトゥンヘイムに攻撃をしかけられないだろう」

メレオルは、暗き闇の王が考えることを少しは読める。あれは、大部隊をもって物量戦で国を根絶やしにするやり方が得意だが、ちまちまと謀略をし、策を練り、最小の部隊で最大の戦果を上げるような戦い方は苦手なのだ。

それは彼自身がまだその力の一部しか取り戻せていないところにある。

彼の王は、いまだ、自我を持つまでにはいたらず、ただその本能によってそれもある一つ限定した忌まわしい感情によって魔族を支配していただけだった。

その忌まわしい感情それは、激烈な破壊衝動。そう彼の王の軍勢は、たった一つの感情それも感情とよべるかも分からない衝動というものにかられているだけなのだ。だが衝動というものは深い。感情というものは、心のよく見えるところにあるから、比較的、コントロールするのは容易いといえば容易い。メレオルからすれば、感情は正と負の両方を持っていると言えるとその弟子アルテミリアにも教えてい
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