第十七話「ヨツゥンヘイムの白き賢者」
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、その大穴からもたらされる邪悪な磁力のような力である。これは、人間をあらゆる方法でゆさぶり、邪悪に陥れる力だからだ。心の目を開いてない普通の人には、メレオルのような人間たちが作った結界によって守られるが心の目を開いてしまったまだ、未熟な修行者などはこの力にまったく対抗できないのである。
今、一人とても危険な状態にいるものが一人いる。
そう、タチカゼである。あのものの心の目は開きかけそして黒い大穴の波動を感じ始めている
そのころ、タチカゼは、なにもない荒野を放浪していた。これは夢だ。それは知っていた。しかし幾度もの戦いで傷つきそして今や死に絶えそうな自分が見ている夢である。もはや黄泉の国の川さえ見えている。水や食料さえなにも持たず。ただ、「星流れ」の一刀を腰に差し、鎧は重いから脱ぎ捨て、貧しい家の者に無償で与えてしまった。弓は、一応もってはいるが、鳥を射って食事したりする気にはまったくなれなかった。このままなら、みちゆく人が困っていれば、やはり無償で弓も手放してしまうかもしれない。天馬は、彼の後をすこし離れたところからずっとついてくるが、タチカゼは自分が、一時でもなんでも世界さえ救える勇者だと勘違いしていたことに嫌気さえさしていた。とても天馬にのる気分ではない。
このまま、荒野を放浪して、放浪者となって暮らすか、そんな考えしか浮かんでこない。
もう、こんなふうにさ迷い歩いて一ヶ月は経つ。なのに、空腹や渇きは覚えたが食物や水をまったく飲まずに歩き続けている。それは彼のうちにある力が彼を死なせないように動いているからだった。
彼がもう歩く力もなく、疲れ果て眠りにつくと彼を、夜の寒さが容赦なく襲う。しかし天馬はやはり彼を見捨てることなく眠りについている
主のそばまで行きその大きな白き翼でなにかから守るように主を包むのだ。そう、天馬には見ええていた。遠く地平線の彼方から邪悪な黒い大きな波動がすべて飲み込まんとものすごい引力を世界に加え続けているのに。
主の心は今、覚醒の最中にある。その中であの波動は主に害をなすと天馬はその心で感じ取っている。そしてその翼によって彼を守ることを自分の使命と感じているのだ。
タチカゼはまどろみのなか、自分がいがいにも寒さをかんじていないことに驚いて目をうっすらと開けた。するとそこには天馬が自分を守るように翼で包んでいるのを見ることが出来た。
「天馬よ、止めよ。私は滅びたい」
「いけません」頭の中に声がする。
「ん?今のは…………」
「私だ、タチカゼ。今おまえを包んでいる」
「まさか、あなたが?」
「こんなに近くにいるのに気づかぬとは、もうじき白き杖がやってくる。いつまでもウジウジするな」
「天馬よ」
その時だった。北の方から黒
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