第十七話「ヨツゥンヘイムの白き賢者」
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しく聡明な魔術師にしたのだ。まあ、それはメレオルの力の一部分でしかないのだが。
さて、問題は彼の王のその破壊衝動だが。衝動というものは感情や心といったものとは少し性質が違う。欲で動くものかと思えばそうでもなかったり。そして衝動というものが一番人を悩ませているものであるといえる。
衝動というものは直接人間の根元に来る。たとえば、力を持てばそれを使いたくなる。これを極言すれば剣や弓矢のようなものを持てば素人でもある程度の力をもてる。そうなれば使ってみたくなるのが人の心の理。ほかにも衝動は、社会のさまざまなところで働いている。衝動がおきるのは抑圧と依存に対するさらなる抑圧。つまり、こころは空気のようなもの。圧力を上げていけば、ものすごい力を生む。それが衝動だ。だから仏教では己の心を空とする、つまりまったくのから。心がから、だから衝動も何もおきない。
しかし彼の王は全盛期、どこまでも悪を突き進んだ。いや、人間にとって善のベクトルが彼の王にとっては悪だっただけで、かれはもうれつな善だった。しかし彼は、憎しみや怒り、果ては正義や勇気そう、彼の心は本来あるあずの陰と陽が悪という形で完成したのだ。さて、至高なる善と究極的なる悪は、果たして、対になるのか? 地獄の一番底のサタンの大地の大穴はそのまま天界につながっているらしいというし。
メレオルは、彼を全身全霊で導こうとしたしかし彼は自分を憎み、魔族を毛嫌いする人間などには虫唾が走ったのだ。
だが彼は打ち倒された。
そう、打ち倒されたのだ。
しかし魔王というものは、その名と魂の強さによって天界の力などなくても自分の肉体と精神を復活することができるのだ。
単純な破壊衝動だけの今の状態ですでに国を一年で三十は滅ぼしている。だが今は、自分の軍を数によって敵勢を押しつぶしていくような単純な兵法しかしらないのだ。いや、それしか出来ないと行ったほうがよいのか。
そしてその三分の一がやられたのだ。
メレオルは各地に自分の弟子を派遣していて、相手がものすごい物量戦で来ようともそう簡単には軍を進行できないようにしている。
そしてこれが頃合だとばかり。ヨツゥンヘイムはアルテミリアに任せ勇者捜索の旅へと出発した。
今、彼の王の亡骸がよこたわるイフシュタルの王の都には、かれの破壊衝動の根源が、目には見えなくとも精神の目を開いたもの、つまり、魔術師や導士、仙人、そして、世の理を悟りしもの、つまりこの世界を救済できるこの世界の真の王になるもの、そのものらには、彼の王がもたらす破壊衝動がまるで、とてつもない磁力をおびた黒い大穴をイフシュタルの方角にみるだろう。そう、その大穴から彼はやってくる。
この世のすべてを滅することのできる体と技と心をもって。
メレオルが危惧することは
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