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剣風覇伝
第十七話「ヨツゥンヘイムの白き賢者」
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る。メレオルはこう言っている。「人はだれしも心をもち、肉体に体現すればそれすなわち心の臓の宿り、そして感情とはその心の臓に張り巡らされた血管である。感情はいわば血だ。そして感情が正と負を持つから、心もまた陰と陽を持つ。そうつまり、光と影、両方あって一つに始めて完成する。それをもっと展開すれば、肉体と精神も陰と陽であり、どちらの鍛錬も怠ってはならない」つまり、メレオルは精神と肉体を陰陽論で見ているのだ。さらにそれに五行が加わり、東のほうの仙人に道士の概念に通ずるつまり、メレオルのような最大級の魔術師は、肉体と精神を両方鍛え、心の陰と陽を完全に融合しているわけである。

昔一度アルテミリアが心の暗黒、つまり陰の力に支配されたことがあった。そのときアルテミリアはあくまで赤く艶やかであろうとし、道を誤ったと感じていた。しかしメレオルは優しく諭す。心にはどす黒い感情と純粋な強い感情がある。「アルテミリア、あなたがあくまで赤く艶やかであろうとするなら、その心を真紅の炎で燃やし尽くしてしまいなさい。どす黒い陰の感情とあなたの真っ赤に燃える炎のような純粋な火のような心によって灰になるまで燃やしつくしなさい。心には陰と陽がある。陰、つまり暗黒を恐れるな、必要とあらば、その純粋な炎の意思でその暗黒の力を昇華させなさい。我らは魔術師。ほんらい闇に属するもの。如何なるものも燃え尽きれば神聖な灰となる。この世を几帳面に悪と善に仕切りをしては、いけません。もうそれそのものが悪であるからです」

完全に闇の中の邪悪なエネルギーにとりつかれていたアルテミリアは、それを聞いて、藁にもすがる思いで三年間、心の中にある火を燃やし続けた。

暗黒の深淵へ引っ張りこもうとするアルテミリアの闇の心からは邪念が次々と出てきた。しかしそれをアルテミリアはことごとく聖なる心の火によって消し続けた。そして最後に全てが燃やされて清められたことによって心の闇は真っ黒な邪悪さをなくして神聖な灰が残された。それによって暗黒の力を統べることができた。そしてアルテミリアは、さらに紅く美しく輝くようになったのだ。艶やかでしかしそれまでの一種の影は、白い灰に変った。今は、その美貌を隠すため、灰色のローブを着ている。それはもちろん、彼女の暗黒が燃え尽きて神聖な灰から創られたローブだ。

では、メレオルは、どうか、メレオルは立場上、いつも暗黒を目にしている。彼の王はメレオルをなんとか手の内に入れようと画策しているが、彼女の白き輝きは、彼女が一度、魔王の手によって魂まで打ち砕かれた時に、魂の一番核のところ。つまり光のもっとも白きところが、

永劫の時間を彼女に旅させ、そしてこの世に再誕したことによって得たものである。そして彼女は魂の本質を知り、その白き永劫の旅によって得た知と力と心によって彼女を世界でもっとも美
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