第十六話「占い屋」
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表だって話すことではない、明晩、わしの館へ来なされ、この村のはずれの「占い屋」という小さな館だ」
そう話すとまた、とぼとぼと歩いて曲がり切った腰を杖を探るようにしてつきながら言ってしまった
のだ。
タチカゼは言われたとおり館へいった。「占い屋」とみょうに曲がりくねった看板がひっそりとある。
「よく来てくれた。ちょうど野鳥をこいつが獲ってきたところじゃ、鳥の汁は滋養があるでの、おまえさんも食べていきなされ」そこには髪の白い少年がいた。弓をもっている、よくできたいい弓だ。
「ばあさん、私は早く話を聞きたいのだが」
「そう急くな、おまえさんもこのごろの魔物の話はきいておろう、やつらは夜の闇に紛れてくる。夜は長い、朝でかけるとしてもまだまだ話をすっかりするくらいの時間はたっぷりある。それに言葉を尽くして話したほうがおぬしの心の傷にもよい。だいぶひどい運命にかかわったようじゃからのう、そういうものを心からすっかり取り除いておかないと後々良くない」
「わかりました、どうやらあなたは本物のようだ、あなたの心はまるで曇りのない水鏡のようだ、その
水の底は深くて私には見通せないくらいだ」
「ほほ、だてに100まで生きとらんよ、しかしわしが死ぬまでにおまえさんがここに来てくれて助かったわしは見通すことはできるがお主のようにもう荒野を渡り歩くことはできぬからな」
「ほう、その様子だとお若いときはさぞ、勇ましいおんなであったのでしょうな、おまけにたぶんとて
も美人だともうかがえる」
「これ、そんな話で老婆をもてあそぶでない、なに、弓矢の技では男でもわしには適わなかったさ、だがそれももう昔の話、これほど腰が曲がればもう、弓どころか井戸の水くみもしんどいくらいじゃ、幸いにもこいつがいてくれて助かっとる」
「そこの少年はなんという名ですか」
「これ、自己紹介をせんか」
少年は一歩前へでて丁寧におじぎをすると、はきはきとした少年らしい声でいいました。
「トレンといいます、婆やの娘の子供です」
「これは、良い跡継ぎに恵まれましたな」
「これでまだまだ、寝床に見事な地図をたびたびこさえるでな、おちおち呆けておれん」
「婆や!人の恥ずかしいことをそんなふうにいわないで!!」
「ははは、なにやら今宵はにぎやかなところへ招かれましたな」
「わしの娘は九人いましてな、この子は九人目の娘の子ですわ」
「本当ですか、これはこれはばあさんなどと気軽に読んでしまって失敬、あらためて大婆様とお呼びしよう。こころなしか私の村の長老を思
い出しました」
「ふむ、東方からずいぶん長い旅をしてきなさったようだ、その剣も変わった剣だ、それに青金でできている。鎧も旅にむいて軽
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