第一部 PHANTOM BLAZE
CHAPTER#12
VERMILION&PLATINUM DANCE
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ヘイズはいても、
褒めてくれる者など決して誰もいなかった。
そしてそれは、当たり前の事だと思っていた。
今でもそう思っている。
では、なんなのだろう?
いま心の中を流れる、この温かな気持ちは?
「ッ!」
不意に、頭の上に熱を感じた。
空条 承太郎が、自分の頭にポンッと手を置いていた。
そして。
「良かったじゃねーか。死なずにすんでよ」
件の剣呑な瞳で自分を見つめながら、彼は静かにそう言った。
ぶっきらぼうな言い方だが、手の平から伝わる熱からは
本当に自分の身を労り、無事を喜んでくれているのが感じ取れた。
感情を無闇に表現しないという性格は、
同時に己の感情を偽らないという事にも繋がる。
苦しんできた者には、慈悲を。
傷ついてきた者には、慈愛を。
差し伸べずにはいられない。
それが、例え終わりのない 「悲劇」 の始まりだったとしても。
何度も。何度でも。
それが、ジョースターの血統の者。
それが、何百年にも渡り受け継がれてきた 『黄金の精神』
「ヤローの腕一本ブッた斬ったんだろ? オレの 「分」 残しといたンだよな?」
変わらぬ静かなトーンで再び承太郎は言った。
慰めなのか戯れなのか、ともあれDIOにも勝る響きで耳に届く承太郎の言葉。
手から伝わる暖かな熱、水晶のような静謐さと気高さを併せ持つ怜悧なる美貌、
陽光に煌めくライトグリーンの瞳と両耳のピアス、仄かな麝香の匂い。
(……え!? う、うそ、やだ! ちょっと待って!?)
『星の白金』の真名に恥じないそれら全ての要素に、
浄化の炎を遙かに凌駕する温もりを感じ
蕩けた心に不覚にも涙腺が決壊しかけたシャナは神速で部屋を飛び出した。
顔を見合わせる承太郎とジョセフの耳元に洗面所の方から
勢いよく流れる水の音が聞こえてくる。
しばしの間。
「……」
アラストールに渇かしてもらったのか水滴一つ無い顔で、
檜の床を踏み鳴らしながらゆっくりと戻ってきたシャナは
承太郎をキッと睨み付けると件の如く
「うるさいうるさいうるさい!」
と遅いリアクションを返した。
灼眼でもないのに目が微妙に赤いのが気になったが、
ジョセフも承太郎も何も言わなかった。
「しかしまさに、九死に一生とはこの事だった」
何事もなかったかのようにアラストールが話を続ける。
「もしあのまま彼の者との戦いを続けていたら、
この子、シャナもまたこの小僧のように 「肉の芽」 で下僕にされていただろう」
「そしてこの少年のように、数年で脳を喰い尽くされ死んでいただろうな。
或いは――」
ジョセフは憐憫の表情で、畳に横たわる花京院を見つめる。
そのジョセフの言葉に、承太郎の瞳
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