六十話:例外
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てとティアナは援護射撃の構えを見せる。スカリエッティはその場を一歩たりとも動かない。
故にその体は剣で貫かれ、さらに骨を砕く打撃を受け、魔弾に撃ち抜かれ崩れ落ちる。はやて達は確かにその姿を見た。その光景を脳裏に記憶した。そうであるならば―――何事もなかったようにスカリエッティが立っているのはどういうことであろうか?
「な、なにを……したんや? いや、そもそも―――何かが起きたんか?」
「どうやら、完成したようだね。ああ、これが私の心象風景か。くくく、面白いものだ」
スカリエッティは何かが起きたとは思えない姿形で乾ききった世界の中心に立っていた。この世界は全てが乾いている。大地は水分が一滴もないようにひび割れ砂と混じっている。空に雲はない、しかし太陽もない。あるのは“聖杯”だけ。だが、それすらも乾いている。
どこまでも貪欲に水を求めている。だが、この世界は得た水など一瞬で乾かせてしまう。決して癒えることのない渇き。その渇きを癒すために世界は無限に求め続けるのだ。知識を、欲望を、どこまでも貪欲に。それこそが―――“この世全ての欲望”。
「確かに私はあなたを刺した……それなのに、これじゃあまるで―――巻き戻っている」
フェイトがあり得ないといった表情で零す。瞬間再生ですらない。攻撃が当たらなかったわけでもない。幻影を斬ったわけでもない。ただ、スカリエッティの全てが―――攻撃を行う前に戻っていた。
「平等でないこの世界にも万人に対し平等かつ公平なものがある。それは流れる時だ。全ての者はその法則から逃れられない。……ただ一人の例外を除いてね」
世界の法則から逃れたただ一人の存在。自身の体を攻撃を受けるその前の状態に戻す。あり得ない。これではまるで時を司る神クロノスではないか。否、事実としてスカリエッティは今この世界において―――
「絶望するがいい、恐怖するがいい。その心こそが―――神だ」
―――紛うことなき神であった。
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