第22話『開幕』
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暁君が魔術を会得してから幾日か経った。
いよいよ明日にまで体育祭の日が近づいている。
初めての中学校での体育祭。しかもあの学校でとなると面白いことになりそうだ。
・・・ちなみに今は、その明日のことを智乃と話している。
時刻は午後9時。そろそろ寝たいのだが、どうやらそうもいかないらしい。
「お兄ちゃん頑張ってね! 応援行くから!」
その言葉に俺は愛想笑いを返す。
だって『部活戦争』に俺が出場するなら、家族の前で俺が魔術部所属ってことがバレるんでしょ? 家族とはいえ、それはちょっとなぁ…。
「あぁ、わかったから寝させてくれ。明日は大変なんだから」
「ぷぅ〜」
智乃は構ってもらえなかったことに不満を持ったようだったが、納得したのか「頑張ってね」と一言残し、自分の部屋へと帰っていった。
『大変』というのは間違いではない。
部活戦争も原因の一つだが、そもそも他の競技にも出なければならない。
「考えても仕方ないか…」
俺はベッドに寝転んだ。
明日になれば全て始まる・・・。
*
「おいおい、またかよ…」
俺は独りでに呟く。
周りには、今までに二度見たことのある草原が広がっていた。
今度は記憶もハッキリしていたし、これが夢だということもわかっていた。
でもやはり、今回も前回と違うことがある。
身も凍る程の冷たい雨が降っていた。
夢の中なのに冷たいと感じるのはこれ如何に、とは思うが、それはこの夢が普通のものとは異なるからだろう。
黒く曇った空を見上げ、顔を雨粒で濡らしながら物思いに耽る俺。
何度もこのような経験をしながら、この夢の意図が全く分からない。
特に二回目に出てきたあの人。あの人は結局誰だったのだ? 顔が最後まで見えなかった。
「雨…か」
一回目は晴れ。二回目は曇り。三回目…今回は雨。
まるで、ドンドンと天気が悪くなっているようではないか。
これが何を指し示すのか、いや、そもそも何かを指し示しているのか。
たとえば、何かの前兆を知らせていたりとか・・・
*
最悪の目覚めだ。
そんな俺の気分とは対照的に、空は雲が一片も見当たらず、今日は快晴であるとわかる。だがまだ早朝なのか、少し暗い。
窓を開けて外をみると、誰も居ないかの様に静かで、5月にしては涼しかった。
さて、昨日から今日に架けて見た夢。内容は完璧に覚えている。あれが何に関係するのか…。
「ん…、さすがに早く起きすぎたか…」
伸びをしながら呟く俺。
時刻はまだ午前5時。
体育祭の準備で親が忙しくなる時間帯といったところか。
選手である俺はもう一時間は寝て
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