第6章 流されて異界
第146話 牛郎織女伝説
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そして、旅館の人たちには俺が何をして居るのかに付いては一切、告げていない。
そんな状況で、笛の音に誘われて森の中に侵入。その後、俺を見つけるって……。
おそらく、コイツは俺の笛の音の中に含まれている龍気に反応している。
そう考えながら、ゆっくりと……恐怖心を抱かせない程度の速度で降下を開始する俺。目指すは、大きく笛の音を響かせても問題ないぐらいに深い山の中。
「何を難しい顔で見ているのよ」
本当は何も考えていないクセに。
我知らず浮かべていた表情を目敏く見つけた彼女が、普段通りの悪態を吐く。ただ、その中に含まれる微かな緊張。
……イカン。無表情を貫いていた心算でも、今のコイツとは完全に身体が密着していたんだった。
「まぁ、偶には物を考える時もあるわ」
例えば今重要なのは、晩飯をどうするかな、とかかな。
口では先ほどハルヒが吐いた悪態に軽口で対応する俺。
但し、我知らずの内に浮かべていた表情の意味はそんな物ではない。……と言うか、殊更、難しい顔と表現される表情で彼女を見つめていた自覚はない。
表情は無。視線も然して強かったとも思えない。
おそらく俺の考えていた内容の深刻さが彼女に伝わった。そう言う事だと思う。
土地神を召喚するはずの笛の音に誘われて顕われた彼女。いくら、俺の龍気に対して敏感になっているとは言え、これではまるで妖。
……いや、俺の龍気に強く反応して近付いて来るのなら、それは俺の式神たちと同じ。
後は俺と、俺以外の存在を何処まで見分ける事が出来るのか。もし、俺と、俺以外の存在をきっちりと見分ける事が出来ず、危険な相手にふらふらと近寄って行った場合……。
そう考えて、次の策を練ろうとした。その際の、かなり高い危機感を直接触れ合っている彼女が感じ取って終った、そう言う事なのでしょう。
「……なぁ、ハルヒ」
この妙に鋭い感性を危険な場所を見極める……と言う能力に生かしてくれるのなら、俺がこんなに思い悩む必要はないのだが。そう考えながらも、それでは天性のトラブルメーカーのコイツのアイデンティティが保てなくなる、と同時に考えている俺。
少なくとも、危険を察知して、それをすべて回避して行けるような人間ならば、一九九九年の七月に恐怖の大王を宇宙から呼び寄せようなどとは考えない。
「笛なら飽きるまで吹いてやるから、その後で良いから、少し付き合ってくれへんか?」
何、……と短く聞き返して来るハルヒ。ただ、その言葉の中に、当然のようにクダラナイ事を言い出したらタダじゃ置かないからね、と言う雰囲気をプンプンさせている。
……チッ、先手を打たれて仕舞ったか。
何、大した事やない。……そう言いながらも、
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