第6章 流されて異界
第146話 牛郎織女伝説
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が吹けたわよね」
聞いて上げるから、一曲吹いてみなさい。
彼女の視線の先を追う訳でもなく、ただ、自らの腕の中に居る少女を見つめるだけであった俺。そんな俺の様子に気付く事もなく、ただ自分本位。思い付いたままを素直に言葉にする彼女。
ただ――
何時も通りの上から目線はこの際、無視をするとして、俺の笛に関してコイツは……。
「おいおい、確かオマエ、俺の笛を芸扱いしていなかったか?」
確かに笛ぐらいならいくら吹いても問題はないが――
ただ、もしかしてコイツ――
何故かやれやれ、と言う雰囲気で肩を竦めて見せるハルヒ。多分、この男はそんな簡単な事も分からないのか、と言う事なのでしょうが。
「一応、芸としては認めて上げているのだから、素直に喜びなさいよね」
一応、芸としては認めている……ねぇ。
小さくため息をひとつ。
確かに俺の笛も下手ではない。ある程度、心を揺り動かす事が出来なければ、土地神召喚や鎮魂に使用出来る訳がない。
ただ、超絶な技法を駆使している訳でもなければ、気を衒った演奏法を使用している訳でもない、和笛の基本的な音色を発して居るに過ぎない演奏でしかないのも事実。
しかし、その演奏でも妙に高い評価を与えてくれる相手も居る。確かに、一応、芸術に類する物だけに、個人の感性に訴える部分が大きく、偶々、俺の演奏が心の中の何かを揺さぶる可能性もゼロではない。
ゼロではないのだが……。
俺の笛は趣味で吹いている物ではない。笛を吹く=術を行使する……と言う状況。
つまり、俺の笛の音には必ず龍の気が籠められている、と言う事。
つまり、相手の感性に訴え掛けているのは俺の笛の音や技量と言う部分がない訳ではないが、それよりも笛の音の中に籠められた霊気に強く反応している可能性の方が高い……と言う事だと思う。
これを前提に置いて、現在の状況を考えてみると……。
先ず、ハルヒが最初に俺の笛の音を聞いたのは一昨日の晩、土地神を召喚しようとした時。
その時も、確かこう疑問に思ったはず。コイツ、笛の音だけを頼りに夜の森に入り込んで来たのか……と。
そもそも、俺や弓月さんが森の中で土地神の召喚を行って居た事を知っているのは有希と万結のみ。おそらく、彼女らにハルヒは会っていないと思うし、縦しんば会っていたとしても、彼女らが俺の居場所を教える可能性は低い。
少なくとも、夜の森。それも、何か事件が起きて居る可能性の高い地で、何が潜んでいるか分からない森の中に、一応、一般人扱いのハルヒが単独で侵入する事を彼女らが簡単に許すはずはないでしょう。
最悪でもどちらか一人。多分、二人揃ってハルヒに同行して来るはず
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