暁 〜小説投稿サイト〜
蒼き夢の果てに
第6章 流されて異界
第146話 牛郎織女伝説
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。この状態で、座りの悪くなったメガネを整える事は、ハルヒの目から見ると不可能。そして、俺が本来、目が悪いのにメガネを掛けたがらない理由を彼女は知っている。
 おそらく、瞳に少し力が籠められたのを、焦点を合わせる為に行ったと考えたのでしょう。

 普段もこれぐらい他者……じゃなくて、俺に対して気を使ってくれても罰は当たらないぞ。そう考えながら、

「悪い、今の俺に正確な時間は分からないわ」

 何時もの腕時計は、昨夜の戦いの最中に壊れてしもうたから。形ある物いつかは滅びる、と言う事やな。
 世の理、諸行無常について口にする俺。もっとも、現実に起きたのはそのような哲学的な事などではなく、少しウカツだっただけ。もう少し慎重なら、幾ら術的に強化されているとは言っても、大切な物を戦場に持って行く事はなかったはずだから。

「そう……」

 あの腕時計、壊れちゃったんだ。
 小さく独り言を呟くハルヒ。良く分からないが、少し決意に近い感情を発している事から、何かろくでもない事を思い付いたのでしょう。
 またぞろ、厄介な事件のオープニングにならなければ良いのだけど……。

「それなら、そろそろ帰るか」

 それでも、ようやく帰る気になってくれた……と言う事に安堵。これでようやく、晩飯から入浴、就寝へと繋がる日常生活のサイクルに戻る事が出来る。
 時間的に考えると晩飯に関しては旅館の食事は無理なので、弓月さん……には甘え過ぎか。でも、有希なら何か準備をしてくれているでしょう。

 先ずは【念話】で深夜営業のファミレスにでも誘えば、準備があるのならその際に何か言って来るでしょう。無ければないで、そのまま彼女を誘って再び外出すればよい。そんな、もう既に帰る事前提で考えを纏める俺。
 しかし……。

「ちょっと、何を勝手に帰る心算になっているのよ。あたしは時間を聞いただけで、帰るなんて一言も言っていないわよ」

 仕舞った。コイツはへそ曲がりやから、俺の方から帰るか、などと言って、素直にそうね、など言って聞く訳はなかった。確かに我を通せば帰る事も可能でしょうが、流石に其処までするほどの用事がこの後に待っている訳ではない。
 ……なら、

 何や、帰りたい訳ではないのか。そう前置きをした後、

「そうしたら、次は何がしたいのかな?」

 俺の能力があれば、どんな深山幽谷でも見に行く事は可能。有視界に転移を繰り返せば、何処にだって連れて行く事は出来る。
 もっとも、俺としては、飯を食う以外の選択肢で人が多い場所に向かうのは気が向かないのも事実なのですが。

 そうね……。そう言った切り、少し夜空を見上げる彼女。悔しいが、その仕草ひとつひとつが何故か計算され尽くされた行為のように感じられ……。

「あんた、確か笛
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