第6章 流されて異界
第146話 牛郎織女伝説
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姉や妹のように近しい相手だと認識して居たって事なんでしょ。
先を促した後、少し視線を外して、まるで独り言を呟くかのように続けたハルヒ。それは、多分、その通りなのだと思う。
しかし――
「何がそれで、何や?」
相変わらず主語が欠如した問い掛けに、同じように問い掛けで返す俺。ただ、何時もは不機嫌な振りをしている、もしくは他人から見ると彼女は不機嫌なのではないか、と感じるだけで、実際は不機嫌でも何でもない事の方が多い彼女なのですが、今、この瞬間は明らかに不機嫌だ……と言う雰囲気を発して居た。
「その話の結末よ」
その旅から帰って来た後に二人がどうなったのか。伝説通り、結婚した後に機を織るのを止めたり、牛飼いの仕事をさぼったりした挙句に、天の川の両岸に分けられて、一年に一回しか出会えなくなったのか――
それとも……。
「旅の途中で何かあって――」
最後まで口に出来ず、尻すぼみとなって行くハルヒの言葉。
成るほど。
「結末か……」
正直に言うと、本来ならこの物語は既に大団円に到達している物語。数々の艱難辛苦の果てに一度は世界の終焉を回避。完璧な世界ではないけれど、未来は……。夜は明け、明日はまた訪れる。そう言う形のエンディングを一度は迎えている。
その物語のエンディングを書き換えて仕舞ったのは、俺の腕の中で物語の続きをせっついて居る少女本人。
その御蔭で既に引退したはずの老優が舞台の上に再び引っ張り上げられて、終わらない輪舞を延々と続けさせられる結果と成って居る。少し嫌味な言い方をすれば、これが現在の俺の状況だと言う事なのでしょう。
但し、そうだからと言って、その事について泣き言をハルヒに言ったトコロで意味はない。彼女自身に大きな罪はない。彼女が行ったのはただ夢を見た事だけ。
夢を見た事がイコール罪となるのなら、夜に眠る人はすべて罪人となる可能性もある。
要は、その夢を利用して世界を歪めようとしたクトゥルフの邪神にこそ大きな罪がある。そう言う事。
……ならば、
「詳しい事は覚えていないが、確かな事がある」
彼女の仕事が機を織る事でない以上、機を織らない事が理由で罰せられる事はない。
俺の仕事も牛どもの監視であって飼う事ではないので、牛飼いの仕事をさぼったからと言って、その事を理由に罰せられる事もない。
今の彼女に教えて意味があるのか分からない。しかし、秘密にしても益はない。
「そもそも、その昔話の後半部分。罰せられた云々の部分はすべて創作であって、事実とは多少異なっている。その可能性が高いと思う」
このような例は他に幾らでもある。
例えば天蓬元帥。伝承で彼は、広寒宮
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