第6章 流されて異界
第146話 牛郎織女伝説
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人工の明かりの届かない、夜の静寂に支配された空間。煩わしい現実すべてから解き放たれたここに存在するのは互いの息づかいと温もりだけ。
ふたりの女神……僅かに先を行く蒼き女神を、紅の女神が追い掛ける濃い藍色の天蓋。
あまりに強すぎる彼女らの光輝により、星々の煌めきすら色褪せる。
――そんなありふれた仲冬の夜。
俺の腕の中で考える人のポーズを実行中の少女。俺の首に回して、身体の安定を図っていたはずの腕は自らの胸の前に。
黙って立っていたのなら、……今の彼女を正しく表現するのなら、粛然とした佇まいの美少女と言えるかも知れない。線の細い美貌に、腰まで届こうとする光沢のある黒髪。
態度はデカいが、実際は華奢で、有希と比べても五センチも違わない程度の小さな身体。一見、その容姿と相まってこの年頃の少女に相応しい儚げな……と言う形容詞を付けたくなる少女なのだが……。
「そうよ、織姫の事を話なさい」
但し、黙って彼女の身体を支えてやっている俺の事を多少考えてくれたとしても、おそらく罰は当たらないと思うけどね。少し……いや、かなり疲れにも似た思いを抱いていた俺に対して、ハルヒがそう言った。
如何にも名案が閃きましたと言わんばかりに両手を叩き、瞳には氷空に浮かぶ星まで映して。
ただ……。そう考えてから、腕の中の少女に気付かれぬように小さなため息をひとつ。
ただ、俺の知っている織姫の事を聞いた所で、コイツに俺の話の真偽を確かめる術はないと思うのですがねぇ。そこん所をちゃんと理解した上で、この名案を口にしたのでしょうか。
――コヤツは。
そもそも、俺自身にさえ、その内容の真偽を確かめる術がないのですから。
「織姫の事と言われても――」
実際、かなり古い記憶に分類される内容なので非常に曖昧で、まして、記憶をインストールされた俺自身がイマイチ信用出来ない内容だと考えて居る部分もあるのでアレなのですが……。
首をひねりながらも、訥々と話し始める俺。これから話す内容は昔話や伝承とは関係のない、俺自身が経験した内容……だと思う。
先ず、俺が牛どもの監視をしていたが牛飼いでは無かった様に、現在、織姫と呼ばれている存在についても、実は機織女と言う訳ではなかった。
話の冒頭部分から、昔話の全否定に等しい内容。当然、あんた、何を言っているのよ、と言うハルヒの反論は素直に無視。この段階でいちいちツッコミに反応していたら、話が前に進んで行きません。
彼女は西王母の七番目の娘。それぞれが虹の色に対応した女仙で、彼女は紫の光を司る女仙だった。
確かに彼女の能力から考えると、布を織るぐらい訳はなかったとは思う。何と言っても糸や弦の類を
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