転身、そして邂逅
Act2.NNO(ニュービー・ナンパ・オンライン)
[1/2]
[8]前話 前書き [1]次 最後
サービス開始時間に一秒たりとも遅れるまいと声を張り上げた結果…少々意気込み過ぎて声が裏返ってしまった。
しかし幸いなことに俺のシステム起句はギアに感知されたようで、濃紺のヘッドギアからは起動音が発せられ、視界は闇に閉ざされる。
そして次に空調とごうごうと言った音声も遠ざかり、周囲は静寂に包まれる。
そして最後に触角の喪失。背中に感じていたベッドのスプリングの軋みは消え、垂直に立たされるかのような感覚を覚える。
続いて奥から手前へとステレオで電子音が駆け抜けていく、ナーヴギアが五感が十全に機能するか俺の全身の神経をノックして回り始める。
この経験は初めてではなかった。購入時にすぐに行う初期セットアップも同一のモノだからだ。
やがて数分間に及ぶ初期セットアップステージを終えると、俺は真っ暗闇の中に一人立っていた。目の前にはパネルと簡素なホロキーボード。
これはSAOの初回起動時にのみ行うアバター作成画面だ。アバターの容姿については大体の当たりをつけていたので、ガイダンスに従ってサクサクと作成を進めていく。
――20分後、
大体思った通りの仮想体が出来上がり、そこからは逸る気持ちを抑えきれずにSTRATボタンを勢いよくプッシュする。
次の瞬間、暗闇だったキャラ作成ルームは滲み出るような光と共にホワイトアウトし、、、
それと代わるようにフェードインしてきたのは抜けるような雲一つない青空だった。
どうやら俺は今宙に浮かんでいるということを足元の感覚がないことで意識する。
そして、恐る恐る足元を見れば そこに広がっていたのは…
「これが……始まりの街か…」
PVやパンフでこれでもかと言うほどこの街を見た俺ではあったが、"実物"を目の前にすると驚嘆も露わに吐息を漏らすことしかできなかった。
遙か高みから見下ろしてもこれが仮想世界とは到底思えないスケール、そして精緻さ。
そうこうしている間にも俺のアバターはゆるゆると高度を下げ…そして中央の広場の石段にふわりと降り立った。
既に広場は俺と同じように一秒たりとも遅れずログインしたのであろう連中が大勢闊歩していた。
色とりどりの眉目秀麗なアバター達、そして弦楽団の奏でる音色が聴覚を刺激し始めた時…
俺のテンションはかつてない程ハイパーMAXだった。
「…うおぉぉぉ、来たぞーーーアインクラッド!!」
周囲の数人もそうしていたように、このSAOの舞台たる鋼鉄の浮遊城の名を叫ぶと共に拳を突き上げる。
正直あり得ない程ワクワクしている、心の片隅では脳波異常でログアウトにならないかハラハラしつつもひとまず辺りを散策しようと足を踏み出す。
「来たのはいいんだけどなぁ…」
五分程街を彷徨った後、俺は頭をぼりぼりと掻きつつそう零した。
実は勇んでここまで駆けて
[8]前話 前書き [1]次 最後
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ