第三十二話 あちこち回ってその五
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「そう思うのね、やっぱり」
「それに後半ネットで滅茶苦茶荒れたんですよ」
阿波野君の困った顔が続きます。
「プロデューサーが交代してから」
「そんなことがあったの」
「酷かったですよ」
阿波野君の顔が今度は嫌なものを思い出した顔になりました。
「本当にね」
「そんなに酷かったの」
「もう。特撮関係は何処も大荒れで」
ネットの世界はかなり広いですけれどその中でだったようです。
「それで手がつけられない状態になっちゃったんですよ」
「そんなことがあったのね」
「はい。だからあの響鬼にはいい印象ないんです」
話を聞いていて無理もないことだって思いました。
「それで」
「ふうん、そうだったの」
「はい。それでですね」
「ええ」
「その辺りはあまり覚えてないんですよ」
ということでした。ちなみに天理教では鬼がどうしたとかいうお話は一切ありません。人についてのお話はありますけれど鬼は出ないんです。
「映画も観ましたけれどね」
「それもなの」
「僕としては後半の方が好きですし」
その荒れた後半です。
「脚本家が。いいんですよ」
「脚本家さん?ひょっとして井上さん?」
「ええ。あの時すんごい勢いで叩かれていましたけれどね」
その大荒れの中でのことだったみたいです。
「けれどあの作風がいいんですよね。台詞回しとかも」
「阿波野君って何かそういうキャラじゃないけれどね」
「あれっ、そうですかね」
「いえ、キャラかしら」
否定したすぐ側からこうも思えたりしました。
「何かよくいる軽い味方キャラってところで」
「ですかね。自覚ないですけれど」
「まあ私がそう見ているだけだけれど」
けれど外れてはいないと思います。
「それにしても響鬼ね」
「はい」
「山で撮影していたのよね」
「そうですよ」
まずはそれに驚きました。
「それって移動とかだけでかなり大変そうね」
「まあ東京からだとそうですね」
阿波野君もこの辺りははっきりとわかっていました。当然と言えば当然ですけれど。
「僕の住んでるところだとあんな山普通にありますけれどね」
「おぢばも周り山だしね」
「奈良ってああいう山ばかりですよね」
「そうなのよね。神戸もそうだけれど」
「あれっ、神戸もですか」
阿波野君にとってはそれが不思議だったみたいです。
「都会なのにですか?」
「神戸って後ろ山よ」
どうやらこのことを知らなかったみたいです。私にとってはそのことがわかりませんでした。これは私が神戸に住んでいたから私の中では常識だったからでしょうか。
「それも結構険しいのよ」
「険しいんですか」
「奈良の山と同じ位ね」
これは本当です。神戸の後ろにある六甲は結構以上に険しいんです。
「妖怪出るとか
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