第十七話 旅立ちその六
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「長く感じるの」
「今は」
「そうなの」
「今この時だけだから?」
後部座席、右のそちらにいる龍馬が言って来た。三人共シートベルトを着けている。
「それでか?」
「それでかな」
「そうじゃないか?」
こう言うのだった。
「だからな」
「感覚的にっだね」
「そう感じるんだろうな」
こう優花に話すのだった、後ろから。
「今は」
「そういうことなんだね」
「ああ、本当に神戸にいるのは最後だろ」
「男の子としてはね」
「だから余計にだよ」
「そうなんだね、そして次に神戸に来る時は」
その時のこともだ、優花は言った。
「僕女の子なんだね」
「御前は御前でもな」
「そうよね」
「ああ、御前はやっぱりそう思ってるだろ」
「何か自然とね」
「だからだな」
「僕今そんな気持ちなんだね」
時間が異様に長く感じるというのだ、不思議なまでに。
「そうなんだね」
「そうだろうな、けれどそれでもな」
「駅には向かってるね」
「周り見ればわかるよな」
「うん、少しずつでも」
それでもだった、龍馬の言う通り確かに。
「駅に近付いてるね」
「そうだな」
「新神戸駅までね」
「あと少しだな」
「そうだよね」
「お弁当何がいい?」
優子が運転を続けながら聞いてきた。
「それで」
「新幹線の中で考えるけれど」
「駅では買わないのね」
「うん、中でゆっくり考えるよ」
新幹線のその中でというのだ。
「そうするから」
「そうなのね、わかったわ」
「それじゃあね」
「ええ、ただ駅弁はね」
「結構迷うよね」
「種類が多くてどれも美味しそうだから」
それ故にというのだ。
「迷うわよね」
「そうだよね、どうしても」
「けれどね」
「それでもだね」
「好きなのを食べてね」
「そうさせてもらうね」
優花もにこりとして答える。
「新幹線の中で」
「そうしてね」
「じゃあね。ただ」
「ただ?」
「新幹線乗るのは久しぶりだから」
こうも言った優花だった。
「楽しみだね」
「そうなの」
「うん、寂しくて不安だけれど」
優子達と別れ一人で長崎に向かうからだ、この二つの気持ちは確かに大きい。
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