暁 〜小説投稿サイト〜
艦隊これくしょん【幻の特務艦】
第十三話 覚悟
[7/9]

[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話
向き直ろうとした時、別の斜め死角から多数の艦攻隊が接近し、魚雷を投下した。
「くっ!!!駄目、間に合わない!!」
紀伊が叫んだ瞬間、ものすごい水柱が上がった。回避できずに次々と魚雷が命中、さらに艦爆隊の投下した模擬爆弾が命中したのだ。模擬魚雷・爆弾とはいえ紀伊は息が詰まる衝撃を覚えた。

「紀伊さん!!!」
赤城が叫んだ。水煙が消え去った時、紀伊はあちこち小破していたが、眼はひたっと加賀を見据えていた。
「まだです!!まだまだやれます!!このくらいで私は撃破できません!!」

海上の加賀の耳にかすかに紀伊の言葉が届いた。
「流石は戦艦とも呼ばれるだけはある、か。だが、それもいつまでつづくかしら?」
加賀は冷静に次の矢を抜き取っていた。
「今の程度ではあなたは赤城さんのそばにつくことはできない。言葉だけでは駄目。あなたの力を、戦場で赤城さんを護りきることのできる力を、私に見せなさい。」

赤城が走ってきて紀伊の腕をつかんだ。
「大丈夫です。赤城さん、あなたのお役に必ず立って見せます。」
「私は・・・こんなことを望んではいなかった――。」
「赤城さんらしくないですよ。」
赤城は驚いた。思いがけない事だったが、紀伊が微笑んだのだ。
「先ほどお話してやっとわかったんです。赤城さんはどんな時でも凛としていて・・・皆さんにとても優しくて、頼りにされる人なんだって。でも、だからといってあまやかしたりはしないですよね?」
「・・・・・・。」
「前に進むためにどうしても乗り越えなくてはならない山はあります。私にとってはそれが今なんです。赤城さんのためだけではありません。私にとっても必要なことなんです。だから、お願いします。最後までやらせてください。」
「紀伊さん。」
赤城は腕を離した。
「あなたのことを私はわかっていなかったようです。あなたは・・・私がおもっているよりもずっとずっと素晴らしい人です。・・・・・どうか、お気をつけて。でも、無理はしないでください。」
「はい。」
紀伊がうなずいたとき、加賀の声が風に乗って飛んできた。正確には旋回している残存攻撃機を通して聞こえてきたのだ。
『まだやるというの?』
「もちろんです。このくらいでは引き下がれません。加賀さん、あなただってもし私が引き下がるというのなら、きっと私のことを軽蔑なさるはず!そうですよね?」
『なるほど、気構えだけは認めますが、それも言葉だけの話。あなたの口にする覚悟がどこまで力という実物を伴うものなのか、もう一度試させてもらいます。』
ぷつりと加賀の声が途絶えた。彼方では加賀がまた矢を抜き取り、それを弓につがえキリキリとひきしぼるのが紀伊に見えた。
(加賀さんは今度こそ私を沈めるつもりで挑んでくる。まともな対空砲火ではさっきの攻防が限界・・・・。)

[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2025 肥前のポチ