第十三話 覚悟
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んのそばにいる資格などない。いいえ、もっと違う理由が今できました。私はあなたに認めてもらいたい。第一航空戦隊として赤城さんと双璧の強さを誇るあなたに。」
紀伊は次に赤城を見た。
「そして、私があなたの支えとなれるか否か、赤城さん、ご自分で見届けてほしいのです。」
「紀伊さん・・・・。」
「よく言いました。」
加賀は相変わらず乾いた声で言ったが、心持顔が紅潮していた。
「今から私が艦載機を放ち、全力であなたを攻撃します。むろん演習です。ですが、実戦と同じと考えてください。そして紀伊さん、あなたがそれをすべて防ぎとめたとき、私はあなたを赤城さんの護衛にふさわしいと認めます。」
紀伊はうなずいた。
「では。」
加賀は紀伊と赤城を見た後、水面をけって海上に走っていった。
「いいのですか?」
赤城が不安そうに紀伊を見た。
「言葉だけでは人の疑念や不安は払しょくできません。言葉に行動が添えられて初めて人を動かすこともあると思うんです。今回のことはそのよい一例だと思います。」
「でも、あなたが――。」
「覚悟はできています。」
紀伊は強くうなずいて見せた。
「でも、それは強制される覚悟じゃありません。私がしたいと思うからもてる覚悟です。」
彼方で加賀がこちらに向けて旋回し、停止した後弓をゆるゆるとひきしぼるのが見えた。さすがに赤城と双璧の一航戦を務めるだけある。構えはあの練習場での訓練の時の姿よりも、さらに盤石になっているように紀伊には思えた。
バシュッ!!と虚空に放たれた矢は無数の艦載機と化して、転進、紀伊に襲い掛かってきた。
「赤城さん、離れてください!」
赤城はうなずくと、紀伊のそばから離れた。
「対空戦闘、用意!!全対空砲、撃ち方――。」
紀伊の手が止まった。敵は上空に上昇する艦爆隊と低空すれすれを飛行してくる艦攻隊に分かれたのだ。急速な速さで進んでくる新型天山と彗星の攻撃隊を見据えながら紀伊は直ちに決断した。
「対空砲は上空の敵機を、主砲は海面を進んでくる艦攻隊を狙います!!撃ち方、初め!!テ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜ッ!!!」
紀伊が左腕を振った。猛烈な対空砲火が敵機を捕え、撃墜していく。さらに打ち出された主砲弾が敵機前面に水柱を作り上げ、巻き込んで撃ち落とした。
「主砲は交互撃ち方で継続射撃!!対空砲、弾幕形成、急いで!!」
紀伊は滑るように海上を移動し、次々と押し寄せる敵機を相手にした。
「通常射撃か。その程度では私の攻撃隊の波状攻撃は防げない。」
加賀は次の矢を構えながらつぶやいた。
「鎧袖一触よ。葬り去るわ。」
放たれた矢が猛然と驀進する艦載機に代わり、次々と紀伊めがけて殺到した。あらゆる角度から、それも時間差でまだんなく押し寄せる敵機に紀伊も疲れを見せ始めていた。一陣を撃破して、次の目標に
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