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艦隊これくしょん【幻の特務艦】
第十三話 覚悟
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ある。こんなところに何の用だろう。紀伊は不安がりながらも急ぎ足に演習場に向かった。そっと海に滑り出すと、紀伊はあたりを見まわした。
 良く晴れた青空だ。かすかだが初夏の陽気さえ感じられる。はるか遠くに数人の巡洋艦娘が駆逐艦娘を訓練しているほかは誰もいない。
「赤城さん、いったい何の用なのだろう・・・?」
紀伊は湧きあがってくる不安に、手で胸を押さえながら佇んでいた。
「ごめんなさい!お待たせして。」
不意に後ろから声がした。紀伊が振り向くと、一人の正規空母が滑るようにして海上を走ってきた。紀伊の前に立つと、にっこりして自己紹介した。
「随分長いこと挨拶ができていなくてごめんなさい。この鎮守府で一航戦を務めさせていただいています、航空母艦赤城です。どうぞよろしくお願いいたします。」
清々しい挨拶に紀伊はどぎまぎしてしまった。
「あ、は、初めまして!紀伊と申します。よろしく、お願いします!」
深々と頭を下げた。赤城は優しげに目を細めた。
「紀伊さんは礼儀正しいのですね。私などに気を使っていただく必要はありません。」
「そんなことはありません。赤城さんのご活躍はいつも皆さんから聞いています。私なんか、とてもとても及びません。」
「謙遜ですよ、紀伊さん。色々とご活躍の話は聞いております。先日は瑞鶴さんを、そしてこの度の南西諸島作戦では翔鶴さんたちを助けていただいて、本当にありがとうございました。」
赤城は自分の事のように嬉しそうに礼を述べた。
「あれはたまたまです。皆さんの教えがなかったら、私も大けがをしていたと思います。」
そう答えながら紀伊は不思議に思った。赤城は想像していた人物とは違いとても優しい人のようだが、何のために自分を呼び出したのだろう。そう思って紀伊は聞いてみた。
「それは・・・・。」
赤城は急に視線を海のかなたに向けた。
「今度紀伊さんたちと共に私も加賀さんも横須賀に派遣されることになりました。」
赤城、そして加賀と一緒に派遣される?紀伊は不安な思いが湧きあがるのを感じた。自分はともかく榛名、霧島、赤城、加賀、夕立という5人の精鋭を呉鎮守府から引き抜いてまで行わなくてはならない特命はいったい何なのだろう。そしてあの加賀と一緒に作戦行動をしなくてはならないのかと思うと紀伊の不安は倍増した。日向とは南西諸島以来徐々に和解できていたが、加賀だけとだけはまだまともに話せていないし、向こうも自分のことを認めていないと思ったからだ。
「それで一度相談したかったのです。」
「相談?」
「今この時になぜと思われるかもしれませんが、どうしても一度あなたにお話ししたいことがあったのです。お恥ずかしいのですが、私の話を聞いてもらえますか?」
紀伊がうなずくと、赤城は語りだした。艦娘として生まれた自分、前世の記憶をもって生まれ
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