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Bitter Chocolate Time
4.改心
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 腕の故障で競技に出ることができないケンジは、大会の間、プールサイドで仲間の泳ぎをずっと見ていた。左腕には大げさに包帯が巻かれ、首から吊られていた。それはケネスのアイデアだった。
 すぐ近くにアヤカはいて、ストップウォッチと記録用紙を片手にまめに働いていた。
 マユミは自分のチームのメンバーといっしょに行動しながら、時折ケンジやアヤカの動きに目をやった。

 午前の競技が終わり、昼休みに入ったところで、ケネスの推測通り、アヤカが動き出した。

 ケンジがプールの入り口から出て自分の学校の控え場所まで一人で移動していた時、背後からアヤカが彼を呼び止めた。

「海棠くん」
 ケンジは何食わぬ顔で振り向いた。「なんだ、アヤカ」
「話があるんだ。付き合って」

 ケンジはアヤカの背後にかなりの距離を置いてついてきていたケネスに目配せをした。ケネスは小さく頷いた。

 アヤカはケンジを人気のない更衣室に連れ込んだ。
「なんだ? 話って」
「昨日は興奮した? 初めてだったんでしょ? ああいう体験」
「何の話だ?」
「自分に正直になれば? ケンジくん。また私にされたいんじゃない?」
「ごめんだね」
「私はまたしたいな」アヤカは不敵な笑みを浮かべた。「あなたには断る権利はないから」
「どうして?」
「あれ? いいのかな? 昨日の写真とかビデオとか、公開しちゃうよ」

 ケネスの筋書き通りにコトが進んでいた。

「好きにしろよ。俺は別に構わない。お前の言いなりになんかならないし、お前を抱こうとも思わない。もう二度とね」

 更衣室のドアの横に身を隠して、二人の様子を窺っていたケネスは小さくガッツポーズを決めた。「(思った通り、あいつはデータがなくなっていることに気づいてへんな)」

「へえ。そうなんだ」
「話ってそれだけか? 俺、昼飯食べなきゃいけないから」ケンジが出口に向かって足を踏み出そうとした時だった。

「そう言えば、昨日私とエッチしてる時、ケンジくん、『マユ』ってつぶやかなかった?」

 ケンジの心臓が一瞬止まりそうになった。「え?」

「確かに言った。マユって妹のマユミのこと、だよね?」
「…………」

 ケネスも凍り付き、青ざめた。

「エッチの時に名前を呼ぶなんて、普通じゃないよね。ケンジくん、妹のマユミとはどういう関係?」
「そ、それは……」
「まさか、」アヤカはケンジに近づき、下から見上げるようにしてケンジの顔をしげしげとのぞき込んだ。

 ケンジはゆっくりと口を開いた。「これだけは隠しておきたかったんだけど、そこまで勘ぐられたんじゃ、話すしかないか」

 ケネスは歯ぎしりをして拳を握りしめた。

「俺、たぶんシスコンなんだ」
「シスコン?」
「そう。妹
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