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Bitter Chocolate Time
4.改心
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の好きな人って……誰? 私の知ってる人?」

 ケンジは少し躊躇した後、小さく言った。「ああ」

 二人の間にしばらくの沈黙があった。

「……幸せだね、その人。こんなに優しい人に愛されて……」
「アヤカ……」
「それが誰かなんて、私訊かないよ。大丈夫。聞いてしまったら、また何しでかすかわかんないからね」アヤカは目に涙をためたまま、ぎこちない笑顔を作った。

「お互いに忘れてしまおう。アヤカ」
「私、あなたに抱いてもらって、幸せだった」アヤカの目から、また涙が頬を伝った。
「俺、抱いてないし」ケンジは少し赤くなった。
「ううん。私にとっては抱かれたのと同じ」
 アヤカは本気で泣き出した。「本当は優しく抱いて欲しかったけど、ああでもしないと私とあなたは繋がれないって思った」しゃくり上げながらアヤカは続けた。「ごめんね、ごめんね、ごめんね……ケンジくん」

 ケンジはアヤカに向き直ると、右手を肩にのせた。アヤカは涙目でじっとケンジを見つめた。二人はしばらく見つめ合っていた。ドアの陰からケネスがその様子を固唾を呑んで見守っている。

「アヤカのことをわかってくれるヤツがきっと現れるよ」ケンジは手を離した。
「ありがとう、海棠くん……」



「っちゅうわけでな、あんまりおもろい展開やなかってんで」
「そうなんだー」

 その晩、ケネスがケンジの部屋でマユミに昼間の様子を話して聞かせていた。

「マーユもその場にいたらそう思たと思うで」

 ドアが開いて、ケンジが三つのコーヒーカップとデキャンタの載ったトレイを持って入ってきた。「誰のことだよ、『マーユ』って」
「マユミはんのことに決まってるやんか」
「そうか、お前もやっと打ち解けて俺たちと話してくれるようになったか」ケンジは嬉しそうに言った。
「その代わり、」ケネスはマユミに向き直った。「わいのことも『ケニー』って呼んでくれへん?」
「え? いいの?」
「もうええやろ。こうして図々しく部屋に何度もお邪魔してんのやから」
「わかった。そうする」マユミはにっこり笑った。そしてケンジの顔を見て言った。「ケン兄、今日はがんばってくれてありがとう」

 ケンジはカーペットの上にトレイを置いた。

「腕、痛くない? ごめんね、あたしがコーヒー淹れてくればよかったね」
「大丈夫。もう痛みもほとんどないんだ。少しだけ違和感がある程度。マユもいつも通りに抱ける」

「ケン兄のエッチ」ケネスが言った。マユミがまた笑った。

「そやけどあの包帯もアヤカには効かなかったっちゅうのは、なかなか悔しい」
「いいアイデアだと思ったんだけどな」
「アヤカんちで撮ったボイスレコーダーのデータも用無しになってしもた」
「ボイスレコーダー? 何でそんなもの
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