3.報復
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ケネスはプールの建物を飛び出した。そしてケンジに聞いた道順をたどり、アヤカのマンションを突き止めた。
「ここやな……」ケネスは灯りのついた二階の窓を見上げてつぶやいた。
アヤカはワンルームマンションに一人で暮らしていた。ケネスは玄関のインターホンを鳴らした。すぐに女性の声がした。「はい」
ケネスは努めて明るく声を張り上げた。「アヤカはんでっか? わい、ケネスです」
「ケニー?」アヤカの声が跳ね上がった。
「あ、あの、わい、この度日本に住むことになりましてな、ごあいさつに上がりましてんけど、お邪魔してもよろしか?」
「もちろん。どうぞ」
ブザー音が鳴って、入り口の観音開きの大きなガラスのドアの鍵が自動で開けられた。ガチャリ。ケネスは入ってすぐのエレベータに乗り、二階で降りた。
「202号室。ここや」
ケネスがノックする前にドアが開けられた。
「ケニー!」
「久しぶりでんな、アヤカはん。お元気でっか?」
「入って、ケニー」
部屋に通されたケネスはできるだけアヤカに悟られないように部屋の中を観察した。
小ぎれいなワンルームだった。ピンクのカバーが掛けられたベッドがある。ノートパソコンが置かれた小さな白いテーブルがある。その横にテレビがある。アヤカがいつも部活に持ってきていたバッグはテーブルの下に置いてあった。その横に別の小さなバッグ。
「(ビデオカメラはあの中やな……。)」ケネスは思った。「(まだ開けてないっちゅうことは、ビデオはそのまま……。パソコンもまだ開いてへんし。)」
「驚いちゃった。ケニー。いきなり来るなんて。でもよくここがわかったね」
「へえ、なんちゅうか、その……」ケネスはわざと言葉を濁した。「ア、アヤカはんに会いとうて、わい……」
「私も会いたかった」アヤカは、ケネスに近づき、手を取った。
「え? あ、あの……」ケネスは戸惑って見せた。
「会いたかったって、どうして? ケニー」
その後の展開をケネスは悟った。「(よっしゃ! うまくいきそうやな。)」ケネスは心の中でガッツポーズをした。しかし、決して自分からアヤカに手を出さなかった。彼はジーンズのポケットに手を入れて、何かを触り、すぐに手を抜いた。
「ねえ、ケニー、私を抱いて」
「え? そ、そんな、アヤカはん、わい……」ケネスは赤くなった。
「そのつもりでここに来たんでしょ?」
「……」
アヤカはケネスをベッドに押し倒した。「あっ!」ケネスは小さく叫んだ。そしてアヤカはケネスの口を自分の口で塞いだ。「んんんん……」ケネスは呻いた。
ケネスから口を離したアヤカは、口元についた唾液を白く細い指で拭いながら、片頬に妖しげな笑みを浮かべた。「萌える。男の人が何かされて感じる姿、私大好きなの」
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