3.報復
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あんな場面の写真、人に見せられるもんか」
「その気持ちもわかる」ケネスは笑った。「ほな、あの後の話、したるわ。わいがアヤカんちに行ってからのこと」
「聞かせてくれ」ケンジはTシャツを着ながら促した。
「っちゅうわけや」
ケンジは腕を組んでその話をずっと聞いていたが、ケネスが話し終わると顔を上げてその親友の目を見つめた。「お前には、どれだけ感謝してもしきれないぐらいだ。本当にありがとう」
「感謝されるほどのことしてへん。逆にアヤカに舐められたあげく中にぶっ放さしてもろたから、なかなかおいしい役回りやったわ」ケネスは少し頬を赤くした。
「しかし、お前都合良く睡眠薬入りのチョコなんか持ってたもんだな」
「親父が開発した安眠チョコや」
「親父? そう言えばお前の父ちゃんって、何者なんだ?」
「言うてなかった? わいの親父ショコラティエやねん」
「何だと?! 初耳だ」
「日本で修行して、カナダでデビューして、資金も十分稼いだ言うて、今回日本に店開くことにしたんや。四月オープン予定なんやで」ケネスは自分のバッグを開けて中をあさり始めた。「まだまだあるで、」そうしてカーペットの上に小さなチョコレートの箱を並べ始めた。
「これはミント入りの『爽快チョコ』、こっちはカカオ成分多めのリッチな風味の『リッチチョコ』、これは唐辛子エキス入りの『目覚ましチョコ』……」
ケンジはそれを見聞きしながらつぶやいた。「ケニー、このチョコのデザインとネーミング、何とかならんか? 今ひとつの感じがするんだが……」
カーペットの上に並べられたそれらのチョコレートの箱は、そのあたりに普通に売られているチョコレートとあまり変わらない個性のないものだった。
「わいの親父、センスないねん。おかんはそれに輪かけてセンスないねん。そしてその息子のわいにも到底期待できへん」
「じゃあ、どうするんだよ」
「困っとる」
その時、階下で玄関の開く音が聞こえた。そしてどたどたと階段を昇ってくる足音。
ノックもせずにケンジの部屋のドアが勢いよく開けられた。「ケン兄!」
「マ、マユっ!」ケンジは驚いて立ち上がった。マユミはケンジに駆け寄り、両腕を広げて兄の身体を抱きしめた。「ケン兄! ケン兄! 会いたかった!」
「いて、いててて……」
マユミはとっさに腕を離し、思い切り心配そうな顔で言った。「ど、どうしたの?」
「マユミはん、わいがここにいること、気づいとるか?」ケネスがぼそっと言った。
「あれっ?! ケニーくん!」
ずるっ! 「今頃かいな……」
ケンジとケネスの話を聞いているうちに、マユミの目には涙が宿った。「ケン兄……。そんなひどい目に遭ってたなんて……。あたし、知らなかった」
シャツを脱いで上半
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