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Bitter Chocolate Time
2.拘束
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た。

 しかしそんな心配をよそに足音はジムのドアの前で止まり、ドアが静かに開けられた。

「誰かいてますかー」

 その声!
「ケニー!」ケンジは大声を出した。それは昨夏ケンジの家にホームステイしてカナダに帰国したはずの朋友ケネス・シンプソンだった。

 ケネスは室内の状況を一目見て、蹴飛ばされたように走り込み、ケンジの拘束されているベッドに駆け寄った。「ケンジ!」

 ケネスはケンジの拘束ベルトを外しながら早口でまくし立てた。「ど、どないしたんや、いったい、何があった!」

 拘束を解かれたケンジは、ベッドに座り直した。口の周りと腹はぬるぬるになっていた。穿いていた水着は切り取られ、ペニスも陰毛もぐっしょりと濡れていた。

「ど、どうしてお前がここに? ケニー」
「わいら一家、日本に移住することにしてん。言うてたやろ、去年」
「こんなに早く来るとは思わなかったよ」
「善は急げ、っちゅうてな」
 ケンジは顔をほころばせた。
「そんなことより、この状況はなんやねん」
「アヤカだ。アヤカにやられた」
「アヤカ? アヤカっちゅうたらここの水泳部のマネージャーのあのアヤカか?」

 ケンジはケネスにさっきまでのおぞましい出来事を話して聞かせた。

「ケンジ、とにかく服を着るんや。ほんでな、すぐにマユミはんに電話し」
「え? なんでマユに?」
 戸惑うケンジにケネスは強い口調で言った。「マユミはんはお前からのメールを読んで、絶対に不安になってるはずや。早よ電話し」
「で、でも、なんて説明すれば……」
「詳しゅう話す必要はあれへん。さっきのメールは自分が送ったんやない、事情は会って話すから、とにかく安心するんや、言うて」

 その時、ケンジのケータイの着メロが再び鳴り始めた。ケンジは慌ててケータイを手に取ると、ディスプレイを開けた。「マ、マユからだ!」
「早う、出てやり!」


 マユミはもう一度ケンジに電話をしてみた。今はとにかくケンジの肉声がリアルタイムで聞きたかった。

 電話が繋がった。マユミが口を開く前にケンジが電話の向こうで叫んだ。『マユっ!』
「ケ、ケン兄!」マユミの目にじわりと涙が滲んだ。
『マユ、聞いてくれ、さっきのメールは俺が打ったんじゃない』
「え?」
『と、とにかく、会ったら全部話すから、安心してくれ』
「ケ、ケン兄、いったい、」
『電話では話しにくい。俺を信じて』
「う、うん。わかった。信じる」
『マユ、俺のマユ。大好きだ』
「うん。わかってる」

 電話が切られた。マユミは静かに目を閉じ、ほっとため息をついて最愛の兄の名をつぶやいた。「ケン兄……」


「ケンジ、わい、アヤカを今から誘惑する」ケネスが唐突に言った。
「な、何?!」

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