暁 〜小説投稿サイト〜
俺達は何を求めて迷宮へ赴くのか
51.第二地獄・荼毘伏界
[3/8]

[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話
った。

 しかし西洋ではこれとは対照的に、龍も蛇も忌み嫌われる邪悪な存在として度々物語や神話に登場するなど「邪竜」の側面が強い。竜は巨大な蜥蜴のような姿をし、火を噴き傲慢で人を殺める。故に東洋とはまるで違い、竜を殺す事は人知を超えた悪に打ち勝つ戦士の誉として語り継がれてきた。西洋人にとって龍とは圧倒的で禍々しい存在だった。

 今、このダンジョンに存在するのは後者としての竜。

 火を噴き、暴れ狂い、人を圧倒する傲慢で邪悪な存在。

 そう、火を噴くのだ。

 4人がかりで漸く転倒させたこの黒竜は、今までブレスを吐き出さなかった。

 理由は分からない。黒竜の持つ戦士としての矜持が使う必要はないと判断したのか、温存したのか、或いは温存しなければいけない事情があったのか。或いは――。

「冒険者の能力と手の内を見極めたいから最初は使わなかったんだろ。何せ今回は新顔が3人もいた訳だからな」
「『異端児』でもなしにその知能なのかよ……。あいつ実は人間の姿になれたりしないだろうな?実は『異端児』のプロトタイプとして作り出されたとか」
「アレの創造主に聞いてみろ。どうせアレも今、この光景を楽しそうに見物している」
「……黒竜倒した俺らを放っておいてくれるものかね、その創造主とやらが」
「倒してみれば分かる。なにせ顔も見たことがないからな、全ては推測しか出来ない」
「推測する予想結果の数言ってみ」
「可能性が高いのが3通り、低いのが7通り、限りなく低いのが26通り、ほぼ存在しないパターンは無限大。どれも人にとって快いものではなかろうな。なんならお前が説得していい方向に変えてみるか?低確率の7通りの内の一つは『アズライールと魔王が信頼関係を結ぶ』だ」

 涼しい顔で告げるオーネストの顔はどこか冗談めかしている気がする。しかし、俺は生憎そのジョークに応えられるほど余裕がなく、手に持っていた自作の継続回復ポーションを呷った。ごくごくと喉を鳴らし、微かにフルーティな香りはするが美味とは口が裂けても言えない液体を胃に落とす。
 こいつはいつぞやのじゃが丸くんポーションから着想を得た新しいポーションだ。通常のポーションは飲んだ瞬間に効果を発動して飲んだ薬剤の質と量の分だけ一気に体を回復するのに対し、このポーションは飲むと常に体が少しずつ回復するようになるものだ。短期的には使い勝手が悪いが持続時間が長く、継続的にダメージを受けることが前提の場合はこれが効いてくる。

 では、どうしてそんなポーションを俺が飲んでいるのか。

 簡単な話、俺達が継続的なダメージを受けているからだ。

 今、黒竜との決戦の場は紅蓮の炎によって灼熱の窯と化しているのだ。そこにいるだけで体が焼かれ、吸い込む息で喉と肺がやられかねないほどに、大気は凄ま
[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ