51.第二地獄・荼毘伏界
[2/8]
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
をかけた鏡を覗き込む。
そして、顔をしかめた。
「聖灯………」
「え?コポ……なに?」
「黒竜が食べている鉱物はただの岩じゃない。あれは聖灯……現在ダンジョンでしか取ることができない、世界一希少な『石炭』だよ」
フーの表情は普段の顔から一気に鍛冶師としての、そして冒険に携わる人間のそれに変貌していた。鍛冶師としての知識と少々のカンが、目の前の光景に激しい警鐘をかきならす。
「その世界一希少な石炭が、なんなんだよ?名前だけ知ってるなんて言わねーよな?」
「聖灯………それは嵐の中でもはっきり見えるほどに強く輝き、しかも少量で非常に長時間燃え続けることから灯台として使われている。別名は『セントエルモの蒼い火』だと言えばわかるんじゃないか?」
「あ………あー!あの灯台のあれ!?あれってそのコボルドなんとかの火なの!?」
「コルポサント!コボルドの石じゃないからね!?というか何の石だよそれ!?」
『セントエルモの蒼い火』といえば海の人――特に船乗りにとっては希望の象徴だ。悪天候な環境でも100KM以上遠くからはっきり目視で確認できるほどに強いその光は、丘に戻ろうとする船を天啓のように導いてゆく。
「聖灯は光源であると同時に、すさまじい熱量を放つ燃料でもある。ヘファイストス・ファミリアをはじめ、鍛冶ファミリアの最高級武具はこの燃料なしには成り立たないともいわれている。恐ろしく扱いが難しいが故に達人級の人間にしか扱うことができない、まさに聖なる灯の源なんだよ、あれは」
「はぁー………そんな高級品をボリボリ食って、いったい何がしたいんだよ黒竜は?まさか地上に持って帰って金儲けに使うわけじゃあるまいし」
「…………燃料、高熱……鱗……ブレス……?」
もしも鉱物を食べる魔物がいたら、それは硬質の物体を纏っているだろうという推測。
最高級の燃料が生み出すであろう莫大な熱量。
黒竜の代表的な技――火炎放射。
脳裏によぎったのは、オラリオを火の海にする火焔の邪竜の影。
「まさか――まさか、な」
「?」
フーの脳裏をよぎった絶望的なまでの想像の内容を知らないミリオンは、冷や汗を垂らすフーの顔を見て不思議そうに首をかしげながらMP回復ポーションを呷り、「まずっ」と呟いた。
= =
ドラゴンとは、古来より力の象徴であった。
東洋では万象を司る「龍」として、特に龍の中には神の遣いというだけでなく神格を持つ者も存在する。龍に似た姿をした蛇は龍の遣いとも言われ、主に海神や天候の神として崇められてきた。一部では八岐大蛇のように人に害をなす存在が龍と同格視されることもあったが、東洋人にとって龍とは神秘的で神々しい存在だ
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ