51.第二地獄・荼毘伏界
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それは、オーネストたちが黒竜討伐に乗り出す4日ほど前のこと――。
黒竜の行動をひたすら監視していたミリオンの目に、今までに見たことがなかった黒竜の行動が映った。黒竜は岩石だらけのとある階層で、壁に頭を押し付けていた。最初は何をしているのかといぶかしがったミリオンだったが、やがて何をしているのか理解して素っ頓狂な声を上げた。
「なんだコイツ、岩食ってるぞ?」
「え、黒竜がかい?」
部屋の中で彼女の洗濯物をたたんでいたフーが顔を上げる。あまりに生活力が低いミリオンを見かねて面倒を見始めているフーもフーだが、自分のブラとパンツが知り合ったばかりの男に畳まれていく光景に疑問を覚えない彼女も相当なのかもしれない。
顎に手を当てて首を傾げたフーは魔物に関する記憶を探る。
「岩を食べる、ねぇ……魔物が食料庫以外で何かを補給するってのは、魔石以外にはあまり聞いたことがないなぁ。アズや『ガネーシャ・ファミリア』の人によると魔物は普通の生物と同じ食べ物を食べられるらしいけど、岩はちょっと……鉱物みたいな外殻を持っている魔物ならありえるかも」
「フーン、鉱物を吸収して自分の体を硬くするとかか。ウチはてっきり胃石かと思ったよ。一応翼もあるしな」
「胃石?なんだいそれ?」
「あん?知らねーのかよフー助。海辺の動物やら鳥やらは腹の中に石を貯めるんだよ。錘代わりにしてたり、石で食ったモン磨り潰したり。『マソ・ファミリア』は海辺のファミリアだかんなー、鍛冶ばっかのフー助と違ってその辺の知識はあるよ」
「知ってるから偉いってわけでもないだろうに……しかもそれ野生生物の話だし」
なぜか誇らしげにニマッと笑うミリオンの顔は、どことなくいたずらっ子のような印象を受ける。最初は険悪な関係だった二人だが、あまりにも自堕落なミリオンの生活態度に耐えられなくなったフーが彼女の服をむしって以来、二人の関係は妙に精神レベルが低下していて子供っぽいやり取りが増えている。
曲がりなりにもエルフで、しかも女性のミリオンから服をむしったとなれば普通なら一生口を利いて貰えなくても可笑しくはない。エルフという種族は純潔をモットーとしてプライドが高くて気難しい。……気難しさに関してはオーネストほどではないが。
なのにこうして微笑ましいとも言えるイヤミを言って笑う上に「フー助」などと呼んでいる姿は、とても邪険な態度には見えない。フーとしても大失敗を犯した自覚はあるので謝ったのだが、なぜか許してもらっていないのに態度が軟化している。
果たしてミリオンがエルフとして特殊なのか、それともココ曰く「エルフ受けがよさそう」な性格と顔が原因なのかは不明だが、ともかく二人の仲が深まっているのは確かだろう。洗濯物を畳み終えたフーがミリオンが魔法
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