第百十三話
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主街区の端まで歩いてきた。もはやこの層に特に用事はなく、集合場所であるリズベット武具店出張所まで帰るだけなのだが、そこは転移門とは真逆の方向だった。
「んじゃ、ボコボコにでもされたら呼べよ」
「頼む」
クラインはそう言い残して翼を展開すると、そこから転移門の方向に飛翔していく。対するショウキは小さくクラインに応えると、翼を展開してフィールドの方に飛翔していった。クラインとは逆方向に飛んでいき、主街区にほど近い谷に来たところで、その飛翔を止めて着陸する。
「もういいよな?」
一息つきながら、誰もいないその場所でそう呟いた。他にプレイヤーどころかNPCもおらず、その呼びかけは空に消えていく――ことはなかった。何もなかったはずの空間に、1人のプレイヤーの姿が浮かび上がっていく。
「……いつからバレてた? こう見えてもレインちゃん、《隠蔽》スキルには自信があるんだけど」
真紅のショートカットにカチューシャを乗せて、どこかメイド服にも似たコスチュームに身を包んだプレイヤー――レインが、冗談めかした口調と笑みで、ショウキの目の前に現れた。ただしその笑みに反して、ショウキはレインからの殺気を感じていて。
「サラマンダー領から出た辺りから」
「えぇ、最初からだよソレ。クラインさん……だっけ? にもバレてたみたいだし、自信なくすなぁ……」
おどけてみせる。殺気は変わらない。ショウキは警戒したままだ。レインはため息を吐く。
「何か……用か?」
「うん。そろそろユウキちゃんたちがさ、攻略に本格参戦する頃かなって」
用などとわざわざ聞かずとも、その殺気や今の敵対関係から明らかだ。確かにアスナが、近々ボスを攻略出来る方法を考えていたが、それをレインに教えてやるつもりはない。にこやかに話しかけてくるレインへの返答の代わりに、腰に帯びた日本刀《銀ノ月》の柄に手をかける――前に。
「なあ……どうしても、ダメなのか?」
ショウキは本心からレインに聞く。セブンに姉だと名乗り出ることは出来ないのか、キャリバー入手の時のように、また楽しく遊べないのか――こんな風に憎まれ役になるようなことをしてまで、隠れてセブンの為になるようなことをするのが。
「……無理だよ」
レインの口からボソッと本音が漏れる。彼女自身がセブンの姉として相応しくなるまでは、それを止めることは出来ないのだと――そう示すように、レインの手に二刀が装備される。今の自分の行動が、姉に会いたい妹を苦しめているだけなのは分かっているけれど――それでも、レインは二刀をショウキに構えて。
「この世界でHPを0になんてしても意味ないけど……その武器は破壊させてもらうから!」
SAOでない以上はHPを0にしたどころで
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