暁 〜小説投稿サイト〜
SAO−銀ノ月−
第百十三話
[10/11]

[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話
主街区の端まで歩いてきた。もはやこの層に特に用事はなく、集合場所であるリズベット武具店出張所まで帰るだけなのだが、そこは転移門とは真逆の方向だった。

「んじゃ、ボコボコにでもされたら呼べよ」

「頼む」

 クラインはそう言い残して翼を展開すると、そこから転移門の方向に飛翔していく。対するショウキは小さくクラインに応えると、翼を展開してフィールドの方に飛翔していった。クラインとは逆方向に飛んでいき、主街区にほど近い谷に来たところで、その飛翔を止めて着陸する。

「もういいよな?」

 一息つきながら、誰もいないその場所でそう呟いた。他にプレイヤーどころかNPCもおらず、その呼びかけは空に消えていく――ことはなかった。何もなかったはずの空間に、1人のプレイヤーの姿が浮かび上がっていく。

「……いつからバレてた? こう見えてもレインちゃん、《隠蔽》スキルには自信があるんだけど」

 真紅のショートカットにカチューシャを乗せて、どこかメイド服にも似たコスチュームに身を包んだプレイヤー――レインが、冗談めかした口調と笑みで、ショウキの目の前に現れた。ただしその笑みに反して、ショウキはレインからの殺気を感じていて。

「サラマンダー領から出た辺りから」

「えぇ、最初からだよソレ。クラインさん……だっけ? にもバレてたみたいだし、自信なくすなぁ……」

 おどけてみせる。殺気は変わらない。ショウキは警戒したままだ。レインはため息を吐く。

「何か……用か?」

「うん。そろそろユウキちゃんたちがさ、攻略に本格参戦する頃かなって」

 用などとわざわざ聞かずとも、その殺気や今の敵対関係から明らかだ。確かにアスナが、近々ボスを攻略出来る方法を考えていたが、それをレインに教えてやるつもりはない。にこやかに話しかけてくるレインへの返答の代わりに、腰に帯びた日本刀《銀ノ月》の柄に手をかける――前に。

「なあ……どうしても、ダメなのか?」

 ショウキは本心からレインに聞く。セブンに姉だと名乗り出ることは出来ないのか、キャリバー入手の時のように、また楽しく遊べないのか――こんな風に憎まれ役になるようなことをしてまで、隠れてセブンの為になるようなことをするのが。

「……無理だよ」

 レインの口からボソッと本音が漏れる。彼女自身がセブンの姉として相応しくなるまでは、それを止めることは出来ないのだと――そう示すように、レインの手に二刀が装備される。今の自分の行動が、姉に会いたい妹を苦しめているだけなのは分かっているけれど――それでも、レインは二刀をショウキに構えて。

「この世界でHPを0になんてしても意味ないけど……その武器は破壊させてもらうから!」

 SAOでない以上はHPを0にしたどころで
[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ