第百十三話
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「それで……ルクスさんとグウェン、って子はどうなったの?」
新アインクラッド第二十二層、キリトたちの家である、林の中に設えられたログハウス。先日、念願のこの家を取り戻したアスナは、対面に座る客に紅茶とお茶請けを出しながら、自らも近くにある椅子に座って。
「んー。やっぱ、簡単にはいきそうにないみたいねぇ」
差し出されたお茶請けをボリボリとかじりながら、その対面の客――リズは溜め息混じりに呟いた。そのまま困ったように髪の毛を掻こうとするが、それはすんでのところで手を止めると、手持ちぶさたになってもう一つお茶請けを摘まむ。そんな様子を微笑ましげに見ながら、アスナは今回起きたことに思いを馳せた。
アスナは居合わせなかったので関わることはなかったが、先日あった、ルクスと大規模なPK集団を巡る騒動の顛末をリズから聞いていた。昔の浮遊城でルクスの仲間だったグウェンの、逆恨みや執着にも似た、ルクスをまた仲間にしようとする計画。同時に各領とシャムロックの不和を引き起こして、かつてのPvPメインの旧ALOに――ひいては、かの《笑う棺桶》が跋扈していたSAO時代に環境を戻すと。
随分とスケールの大きい話であるが、それがかつて攻略組を分断せんと襲いかかった計画をなぞっていると聞けば、当事者であるアスナも戦慄せざるを得なかった。浮遊城の攻略前半、《笑う棺桶》の前身によって引き起こされた悲劇によって、アスナを含む攻略組がバラバラになりかけたのは確かなのだから。
「ま、それ自体は何とか阻止して、今は各領に説明会ねぇ」
――ま、あたしはハブラれたんだけど、と冗談めかしてリズは笑う。他のメンバーは当事者として、シャムロックや各領に事情を説明しに行っているらしく、これでひとまずは収まるだろう。シルフ領とケットシー領にはリーファにシリカ、サラマンダー領にはクラインが無理やりキリトを連れて行ったらしく、おかげで今はアスナしか家にはいない。
「ショウキもシャムロック……セブンんとこに行っちゃったし。あたしもどっか、無理やりついていけば良かったわ」
「まあまあ。たまにはいいじゃない、ゆっくりすれば。あ、お茶のお代わりいる?」
「いただくわー。ま、まだ全部決着って訳にはいかないけど、大体は終わったんじゃないかしら」
空になったカップにまたもや紅茶がなみなみと注がれていき、一礼してリズはそれを口に運ぶ。グウェンでは知りえない浮遊城攻略前半の情報の出所、ショウキが見た身のこなしの違うポンチョの男、ルクスとグウェンの仲直り――など、まだまるっきり解決とはいかないけれど。
「そんなしみったれた話より、アスナはどうなの? スリーピング・ナイツのみんなとさ!」
「うん、もうバッチリ! 他の攻略組より先に、ボスに挑む作戦まで
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