第四章
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「だから徹底的にやってやるさ」
「だよな。俺もだよ」
「しかし。人間から虫になるのってな」
「しかもゴキブリなんかな」
誰からも忌み嫌われるだ。そうした虫になるのはだというのだ。
「こいつは相当酷いことをしてきたんだな」
「そうだな。閻魔様も言っておられたな」
ここでこうも言う赤鬼だった。
「こいつは生きながらこの虫になったってな」
「それで自分をいじめていた家族に害虫として殺されたらしいな」
「それから地獄に落ちてか」
「今こうなっているんだな」
「本当にとんでもない奴だったんだな」
また踏み潰したゴキブリを見ながらだ。赤鬼は言った。
「普通生きながら虫になんかならないからな」
「そうだな。しかしな」
「行いは確実に影響するんだな」
「ああ。因果応報だよ」
青鬼はこの言葉を出した。
「悪い奴は絶対に報いを受けるんだよ」
「虫になるのも地獄に落ちるのもか」
「ああ、報いだよ」
まさにだ。それだというのだ。
「こいつもそれを受けたんだよ」
「相当性格の悪い奴だったのは確かだな」
「そうだな。じゃあその悪事の報いにな」
「これからも踏み潰してやるんだな」
「こいつが地獄から出るその時までな」
地獄には永遠にいる訳ではないのだ。何時かは絶対に出られるのだ。ただしその時間は人間界の時間と比べて途方もなく長いものになっている。
そしてその気の遠くなる様な時間をだ。赤鬼はどうするかというのだ。
「こいつを踏み潰し続けてやるぜ」
「そうするか」
「ああ、ここはそういう場所だからな」
地獄だ。血の池に針の山もある。そして燃え盛る獣達も入れば鬼達もいる。炎の煙と亡者達の呻き苦しむ声で満ちている。まさにそれであった。86
「徹底的にやってやるさ」
「そうしないとな。それでな」
「ああ、それで?」
「また悪い奴等が来るけれどな」
地獄だからだ。来る亡者はそうした輩に決まっていた。
「その連中の相手もしてやろうぜ」
「そうだな。このゴキブリも踏み潰しながらな」
赤鬼はまた言う。
「他の亡者の相手もしてやるか」
「じゃあ今からその連中の相手をしに行こうぜ」
新入りの亡者達、その連中を責め苛みにだというのだ。
「いいか。じゃあ行くか」
「そうするか。それじゃあな」
赤鬼は青鬼の言葉に頷きだ。そのうえでだ。
今はそのゴキブリを炎の中に蹴り込んだ。そうしてだった。
彼は亡者達の方に行く。存在を忘れられたゴキブリは炎の中で生きながら焼かれていく。死んでもそこからすぐに生き返ってまた焼き殺される。畜生道に落ちてそうなっていた。
畜生道 完
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