第一部 PHANTOM BLAZE
CHAPTER#8
CRAZY PLATINUM LIGHTNING 〜雷吼〜
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力を使えば不可能ではない」
「アラストール!?」
信じられない、と言った口調のシャナの代わりに胸元のアラストールが応えた。
「しかし “フレイムヘイズ” でない者が
そんな事を行えばどうなるか我にも解らぬ。
貴様、死ぬかもしれんぞ」
「ナメんなよ。ンな事でビビり上がるようなシャバイ気合いじゃあ、
「不良」はヤってられねーぜ」
微塵の動揺もなく承太郎は言い放った。
「記憶の操作もまた問題だ。自在法はそう都合良くは出来ていない。
この娘の記憶を弄るという事になると、
その反作用によって “貴様の存在はこの娘から完全に消える” 事になる。
貴様を 「軸」 にして起こった出来事を消すという事だからな。
良いのか? それで?」
「好都合だ。やりな」
これにも承太郎は即答した。
「むぅ……」
あまりにも明瞭な受け答えに、アラストールが小さく呻く。
承太郎の 「胆力」 と 「覚悟」 の程を試す為に、多少事実を誇張して言ってはみたが、
予想に反して承太郎が全てをあっさりと受け入れ、全てをあっさりと差し出してくるので、
不意に老婆心に近い感情が 『紅世の王』 ”天壌の劫火” の裡に湧いた。
「……貴様? 本当にそれで良いのか?
“この娘にとってそちらの方が残酷” だとは、」
「同じ事を二度いう必要はねーぜ……」
アラストールの言葉が終わる前に、承太郎は学帽で目元を覆いながら遮った。
「オレの傍にいれば、必ずまた同じ目に会う。
ロクでもねぇ事に関わって死ぬこたぁねー」
「……」
傍を渇いた風が通り過ぎ、シャナの黒衣の裾を揺らす。
承太郎の目元は学帽の鍔で覆われているので、その表情は伺えない。
だが、感情も目も言葉も必要なかった。
その存在だけで、アラストールには充分だった。
承太郎の全てが、伝わった。
その想いも、何もかも。
「……うむ。ならば最早語らぬ。
貴様がそれで良いというのならば……」
「……」
自分の胸元で、明らかに含みのある言葉でアラストールが言った。
“男同士にだけ解る” 事があるのだろう。
シャナは胸元のアラストールを見つめる。
アラストールには、一体何が解っているのだろう?
シャナは承太郎の前に立つと、その凛々しい灼眼でライトグリーンの瞳をみた。
「いいのね? 言っとくけど、半端じゃなく痛いわよ」
「痛い」という部分を強調してシャナが言う。
「くどい……とっとと始めろ」
「手ぇ出して」
「……」
シャナは差し出された承太郎の血に塗れた手に、
少し赤くなって自分の小さな手を重ねて繋ぐと
瞳を閉じて自在式を編む為に精神を研ぎ澄ました。
「はあああああぁぁぁぁぁ」
鋭い声と共にシャナの足下に封絶の時とは違う、
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