第182話 劉弁と正宗 後編
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していない。董少府とまともに顔を合わせたことは無いが、全く知らない中では無い。董少府が病と聞き見舞いをしたいと思っただけだ。賈尚書令、董少府はご在宅なのだろう?」
正宗は馬上より物腰穏やかに賈?に聞いた。賈?は言葉に窮したのかしばし沈黙した。
「劉車騎将軍のお気遣い有り難く存じます。しかし、主は自分の病が劉車騎将軍にうつっては大変と考え、会うことを遠慮したいと申してました」
賈?は感情を感じさせない声音で正宗に淡々と説明した。彼女からは明確な拒絶が感じられた。正宗もそう思ったのかそれ以上何も言わなかった。しかし、正宗の双眸は賈?への警戒の色に染まっていた。
「そうか。それは残念だ。董少府には私がよろしくと言っていたと伝えて欲しい」
正宗は何か言いそうな泉を手で静止させた。
「帰るぞ」
正宗は泉と騎兵達を連れ董卓の屋敷から去った。賈?は正宗達が立ち去る後ろ姿を暗い目で見ていた。
「正宗様、賈尚書令の不敬に何故黙って引き下がったのです」
泉の怒りは最ものことだった。正宗は間違いなく朝廷の重臣である。その重臣が直々に見舞いに来たにも関わらず、賈?は門前払いしたのだ。それに、この機会は董卓陣営にとって、正宗と和解できる絶好の機会だったはずだ。正宗から差し出した手を賈?は明確な意思で払いのけたと言ってよかった。
「私へ敵対の意思を表明したということだ。泉、いつでも兵を動かせるようにしておけ」
「真逆、この都で正宗様を襲撃するということですか?」
泉は「有り得ない」という表情だった。
「分からない。だが、賈尚書令は危険だ。何をするか分からない。泉、もしもの時は并州に逃げ込むぞ。揚羽が万事整えているはずだ」
正宗は囁くような声で泉に言うと、彼女は深刻さを理解したのか深く頷いた。
正宗が董卓との面会に失敗した後、賈?は董卓の屋敷内にある自室に籠もっていた。正宗が上洛する一週間前から彼女は自室に籠もることが多くなり、その部屋に出入りしている人物が増えていた。彼らに共通することは全て賈?子飼いの者達だった。
正宗の董卓屋敷への訪問から八刻(二時間)後、張遼が肩を怒らせて賈?の部屋の戸を乱暴に開け入ってきた。張遼は入ってくるなり賈?を凄い形相で睨み付けていた。その表情は腹立たしいが必死で怒りを抑えている様子だった。
「霞、どうしたの?」
賈?は、張遼の様子など気にする様子もなく、椅子に腰掛け竹巻に目を通していた。張遼は賈?の態度が気に入らないのか更に表情を険しくさせた。
「どないなことあるか!」
「何なのよ。五月蠅いわね」
賈?は張遼を疎ましそうに見た。
「劉車騎将軍がこの屋敷に来たそうやないか。どうして。どうして! 月に会
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