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大統領 彼の地にて 斯く戦えり
第十八話 会談
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たペルシャールは”抜いてくれればそれを理由に捕えられたんだけどな”と内心残念がった。
「ピニャ皇女、私はただでは返さないと言ったのです。条件を飲んでくだされば帝国に返して差し上げましょう」
「その条件とは?」
ペルシャールは内心かかった!と思いつつ続けた。
「現在勢力を拡大している講和派と共に主戦派を説得して頂きたいのです」
「説得…?」
「ええ、主戦派を説得して講和への道を進めていただきたい」
「講和…」
ピニャは呟くように言った。
「もし飲んでいただけるならすぐにでも帝国に帰還できます。もし拒否するというのであれば…そうですね、軟禁させていただくことになるでしょう」

これは受けるしかない。そう考えたピニャはすぐに同意した。ピニャは会談終了後すぐに帝国へと帰還した。途中まで第一航空騎兵団のヘリが送迎したのである。
ピニャは帝国が滅ぶことはないと安心していたが、これには裏があった。

ペルシャールはピニャにあまり期待はしていなかった。もしピニャが主戦派を説得して講和できればそれでよし。その後ゆっくり人心掌握を行い最終的には帝国そのものを崩壊させ、それを理由に制圧しようと考えていた。
説得に失敗したらピニャに交渉能力なしとして切り捨て、当初の計画通り帝国に電撃的に侵攻し制圧するつもりだったのである。
つまりピニャが説得に成功しようがしまいが結局のところ帝国が滅ぶことに変わりはなかったのである。変わりがあるとすればピニャ自身が生きているかいないか、その程度であった。

そして帝国制圧後に重要になるのがフォルマル伯爵領である。ペルシャールは帝国を滅ぼした後、フォルマル伯爵領を特地特別政府として機能させるつもりであった。異世界をゲート越しに統治していくのは難しく、問題が発生した際迅速な行動を行うことは困難である。そこで同地に同地の人間を主とした政府を成立させ、裏でそれを制御しようと考えたのである。


「ハイドリヒ長官」
「はっ」
ピニャを乗せたヘリを見送りながらペルシャールはハイドリヒに話しかけた。
「帝国電撃制圧作戦は何時間で開始できる?」
「2日もあれば十分かと」
「ふむ、準備を進めてくれたまえ」
「御意」
そう短く答えるとハイドリヒはペルシャールに無言で1メートルは優に超える書類の束を渡して去った。


その後ペルシャールは泣きながら司令室に戻り、4時間かけて決裁をした。しかしそのほとんどは涙でぐしゃぐしゃになってしまい、結局後にハイドリヒが書き直すことになったのであった……

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