第四部五将家の戦争
第六十二話天下の乱れんことを悟らずして
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辺境領軍の猟兵二個師団に騎兵集団がいる。こちらも損耗が回復すれば十万規模になるだろう。
龍口湾から虎城までに消耗した戦力は甚大だ。護州単体で皇龍道を防衛しているが、十万の兵を相手にする事は不可能だ」
「つまり、だ。兎にも角にも時間を稼がねばならん。〈帝国〉軍も雨期に入る前に虎城を貫きたいだろう。だからこそ戦力の拡充と虎城の主要三街道の防衛体制を構築せねばならない。
雨期までなんとしても連中に虎城を貫けると思わせてはならない、そうなったら皇都を失う、生産力を失う。つまりは、国として生き延びる目はなくなる」
「その為には〈帝国〉軍の主攻正面となりうる皇龍道、及び内王道の後方を扼する事ができる六芒郭を維持せねばならない。ここに、六芒郭に兵力を誘引せねばならなない」
「この六芒郭で、ですか」
新城少佐が言葉を繋ぐ。
「正に然りだな、要塞司令殿。故に可能な限り支援を行なっている」
豊久が細巻をくわえると副官の米山が素早く火を着けた。
「こちらからも新城支隊の救援作戦を実行する予定だ。雨期に入り、戦力の増強が整えば虎城の軍も動く。
それも迄は何としても持ちこたえてくれ」
紫煙を吐き、豊久は満足げに頷いた。
「派遣参謀みたいな真似をしてしまったね。あれこれと言ったけど、結局は貴様らの受けた通信の通りさ。
新城支隊は六芒郭要塞の防衛並びに遅滞戦闘の継続を任務とする。それが陸軍軍監本部並びに近衛総軍司令部の指令だ。
よろしく頼むよ、新城少佐」
「はい、聯隊長殿。確かに拝命致しました」
「よろしい大変結構!――っとこんなもんだな。後の話は輜重将校連中としてくれ、俺の部隊はあくまで護衛と後衛戦闘用だからな。しばらくの間、主力と共にこちらで世話になるよ」
皇紀五百六十八年八月五日 午後第九刻
六芒郭本郭司令部庁舎司令室 独立混成第十四聯隊 連隊長 馬堂豊久中佐
〈帝国〉軍のカミンスキィ少将曰く――かの蛮軍は夜をも戦争に動員をかけている。――これは導術、剣牙虎の活用という〈帝国〉軍ですら経験したことのない奇怪な戦争を謳った言葉である。
しかしながら六芒郭は敵もおらず、大半の導術兵も朝を迎えるまで一時の休息に浸っている。
だが六芒郭――とりわけ南突角塁はちらちらと篝火が焚かれ、千近い影が動き回っている。
司令部庁舎も明かりがともった窓が多く、やはり戦時の軍という物はやるべきことが途切れることはけしてないのだと主張していた。
六芒郭のすべてを采配する司令の私室もいまだ不夜城の構えを見せている部屋の一つであった。
「やることは山積み、先行きは不透明――なかなか素敵な戦争だな、まったく」
同じ庁舎ではあっても別の部屋を割り当てられている筈の馬堂中佐は景気よく
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