第十二話 転進
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と休養のために呉にも立ち寄り、呉鎮守府派遣艦隊と合流して横須賀を目指します。」
「それは誰じゃ?」
「指令書によれば、金剛さん、比叡さん、そして紀伊さんの姉妹である近江さんとなっています。到着は今から1週間後になるそうです。」
一週間、と赤城がつぶやいた。加賀はそっと赤城を見たが一瞬目が見開かれていた。彼女の顔色が青ざめて見えたからだ。
「随分急ですね。」
と、筑摩。
「はい。南西諸島の陥落を受けて敵が動き出すのは必至です。強力な掩護艦隊をヤマト近海に送り込むことも予測されます。したがってその前にできる限り前線の敵戦力を漸減し、来るべき敵主力との決戦に備えるという方針のようです。」
「その前にこちらが倒れなければいいけれど。」
「加賀さん。」
赤城がたしなめたが、乾いた声で無造作に述べられた言葉は誰もが内心抱いている危惧を良く表現していたといっていい。ヤマト軍令部は少し性急ではないのか、という思いを誰もが持っていた。無理な作戦を推し進めることは必ずどこかに負荷をかけることになる。それが耐えられる限度ならばいいが、いつかは負荷に耐えかねて自己破綻することになるかもしれない。取り返しのつかないことにならなければいいのだが、と鳳翔も思っていた。
結局提督の提出したプラン通り、派遣艦隊は赤城、加賀、霧島、榛名、夕立、そして紀伊と決まり、さらに横須賀までの護衛艦隊として暁、響、雷、電の第6駆逐隊が加わることとなった。以前紀伊を迎えに行くために往復しているからうってつけだった。
会議が散開した後、鳳翔と利根と赤城、それに加賀だけが残った。
「軍令部の意図はわかるが、やはり早急の色が見えるな。」
利根が言った。
「確かに電撃作戦によって、ある程度の勝利は得られ、ある程度のくさびをも打ち込めるかもしれん。だが、深海棲艦の戦力は計り知れん。遠征部隊を除いた今ヤマトに所属している吾輩たち艦娘の総数は高々百数十人程度じゃ。もしも深海棲艦が数千隻、いや、数万隻いたとして、それが一斉にヤマトに襲来したらどうなる?」
「・・・・・・・。」
鳳翔はじっと窓の外を見ている。
「勝負は見えている。鳳翔よ、おぬしも前世での戦いを覚えておるじゃろう。航空戦による戦いの幕を開いたにもかかわらず、敵の勢いを過小評価し、己の弱点を見失い、さらにはいたずらに艦隊決戦に固執し戦った結果、どうなったのか――。」
「わかっています。」
鳳翔は顔を上げた。
「私もあの前世での悲惨な戦争の生き残りの一人です。それぞれの方の最後を、見聞きしました。よく覚えています。ですが・・・・。」
鳳翔はそっと窓を開けて外を見た。とても戦局がひっ迫しているとは思えないほど穏やかな青空、そして青い海が広がっている。波は優しげな音をとどろかせて鎮守府に打ち寄せていた。
「ですが
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