第十一話 それぞれの思い。
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・・・・幸せ・・・・・。」
ピ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜ッという無機質な電子音が部屋に響いた。
「翔鶴姉!!」
瑞鶴は落ちていく手をつかんで、懸命に叫び続けた。
「翔鶴姉!!駄目、行っちゃ駄目!!お願い、お願い、一人にしないで!!!!」
瑞鶴は翔鶴の体を揺さぶり続けた。
「翔鶴姉!・・・翔鶴姉ッ!!!」
どっとドアが開いて、榛名と紀伊、それに伊勢と日向が飛び込んできた。
「嫌・・・・嫌・・・・嫌・・・・・。」
涙が翔鶴の白い頬に落ちていく。
「翔鶴姉〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜ッ!!!!!!!」
病室が悲痛な叫びで満たされた。瑞鶴が翔鶴の頭を抱き、大声で泣き続けている。
「くっ・・・・!!」
伊勢は正視できず、脇を向き、日向は蒼白になっていた。榛名は口元を両手で覆っていた。紀伊は静かに、だがあふれる涙をぬぐおうともせず、ずっと二人を見つめていた。
その夕暮れ――。
佐世保鎮守府を照らす夕日はとても穏やかだった。波も静かに埠頭を洗っている。その天候の下、佐世保鎮守府にて大規模な葬送式が行われた。大海原を見下ろす高台に墓標がたてられた。瑞鶴は静かに進み出て、墓標に翔鶴が愛用していた胸当てと弓を静かに供え、ひざまずいて静かに手を合わせた。全艦娘は一斉に敬礼した。
「・・・・・・・。」
祈り終わり立ち上がった瑞鶴は風に吹かれ、ツインテールを揺らされながらじっと翔鶴の墓標を眺めていた。その瑞鶴の後姿を榛名も紀伊もじっと見つめていた。
夕日に照らされ、翔鶴の弓が静かに光り輝いている。
やがて瑞鶴は墓標に背を向け、皆に深々と一礼すると、しっかりとした足取りで歩き出した。
(翔鶴姉・・・・。)
歩みをつづけながら瑞鶴は胸の中で誓っていた。
(私はもう泣かない。私は絶対に翔鶴姉の思いを受け継いでいく!必ず、深海棲艦を撃滅して、皆が安心して暮らせる世界、取り戻して見せるわ!!!)
瑞鶴は誰かに揺さぶられたような気がして、はっと体を起こした。いつの間にか眠っていたらしい。
「う・・・・。つっ・・・・・。」
変な体制で寝ていたのだろうか、体がとても痛かった。
「?」
はらりと体から毛布が落ちたのに瑞鶴は気が付いた。眠っている間に誰かがかけたのか。
「瑞鶴ったら。」
自分の名前を呼ばれた。聞きなれた声だ。
「駄目でしょう?そんな恰好で毛布なしで寝ていたら、風邪をひいてしまうわよ。」
瑞鶴が視線を向けると――。
翔鶴が体を起こして、こちらを見ていた。あのいつもの穏やかな、ちょっとたしなめる様な笑顔を浮かべて。
瑞鶴は身動きできずに凍り付いていた。
「嘘・・・・・・。」
「なにが、嘘なの?」
「・・・・・・・。」
「ずうっとうわごとを言っていた
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