第十一話 それぞれの思い。
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ようですけれど、すぐにまた出ていくので、私たちも声をかけられなくて・・・・。」
榛名が言った。瑞鶴が出てこないので、紀伊と榛名は病室の妖精に伝言をしたり、見舞い品を差し入れたりするだけになってしまった。
「伊勢、どうする?」
日向が水を向けた。今回の派遣艦隊での指揮艦娘は伊勢ということになっていた。
「日向や山城と違って、翔鶴は重体・・・・。瑞鶴の気持ちはとてもよくわかるわ。でも、軍令は無視できない。どうあっても瑞鶴には呉鎮守府にかえってきてもらわないと。」
「彼女がそれを承知するかどうか、か。すまないが榛名、紀伊、もう一度私たちと一緒に病棟に行ってくれないか?」
「わかりました。」
二人はうなずくと、伊勢、日向と共に足早に瑞鶴と翔鶴のいる病棟に向かった。
あれからほぼずっと、瑞鶴は翔鶴の病室に詰めていた。時折翔鶴はうなされるようにうわごとを言うが、目を覚ます気配がなく、顔色も透き通っていくようだった。次第に瑞鶴は絶望を覚えていた。
どのくらい時間がたったのだろう。瑞鶴は誰かに呼ばれているような気がして、目を開けた。
「瑞鶴・・・・。」
翔鶴が目を開けてこちらを見ていた。
「翔鶴姉、気が付いたの!?良かった!!今、軍医妖精を呼んでくるから!!!」
「待って。」
翔鶴の声に瑞鶴はつんのめりそうになりながら振り返った。
「えっ?」
「ごめんなさい。」
「どうして・・・どうして謝るのよ?変だよ?」
「瑞鶴・・・・。」
瑞鶴は差し出された翔鶴の手を握った。とてもとても冷たく、血が通っていないようだった。瑞鶴はぞっとなった。
「瑞鶴、私は――。」
「それ以上言わないで!!駄目、翔鶴姉!!!」
「あなたは私に代わって、私の分まで皆を護って。あなたにはまだこれからやるべきことがあるのだから・・・・。」
「翔鶴姉何を・・・・また元気になって一緒に戦うんだから!!ずっと一緒だって約束したじゃない!!」
翔鶴は首を振った。
「私は、いつもあなたに注意してばかりだったわね。もっとお姉さんらしいことをしてあげたかった・・・・ごめんね。」
「・・・・・・っ!!」
こんなことを言う理由は一つしか思い当たらない。嘘であってほしいという願いとは裏腹に、瑞鶴はぎゅっと目をつぶり、息をのみ下していた。翔鶴は右手で瑞鶴の頬をぬぐった。
「泣かないで。私はあなたの姉であれて、とても幸せだったわ。あなたのことを私はずっと、見ているから・・・・。」
「嫌、嫌・・・・!!そんなの、見ているだけなんて――。」
「瑞鶴。」
翔鶴は微笑んだ。透き通るようなとてもとても美しい笑みだった。
「ありがとう。あなたがいてくれて、私はとても・・・・とても・・・・・。」
すっと翔鶴の眼は閉じられ、手が生気を失ったように静かに落ちた。
「とても
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