第2話
ep.011 『室内にも雨は降るってコト、これ教科書にも出るからっ!』
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、地面も割れている。辺りは瓦礫と炎しかなく、空は月も星も無い真っ暗な空だった。
そして正面に彼女。
数日前の出来事が脳裏で再生されると同時、あの人は一歩を此方に。小さくも誇らしく逞しく優々しく猛々しく、そして可憐な乙女の一歩。
その一歩に続いて二歩、三歩と此方に歩み寄る。先日の事もあり身体を後ろに、彼女から距離をとろうと下げるが、身体は全くに動かない。
また視界が停止する。
彼女の元々いた位置とここからちょうど真ん中辺り、姿が固定され停止する。それでも足音は聞こえ、段々と近づいて来る。
次の瞬間、テレビのカットが変わる様に一瞬で、奇怪ながらも当然に彼女は俺の前にいた。
「やっぱり君の翼は綺麗だね、昔見たまんまだ。黒って汚い色のはずなのに、この翼は綺麗。」
そう言って立前さんは俺の右肩よりもさらにもう少し上を見る。
「私もこんな翼があれば、君の隣に入れたんだろうか。君の翼と同じようなものが欲しかった。」
はっきりと言って、何を言っているのか分からない。
動かない首を無理矢理に曲げて右後ろを見る。そこには、長さで言うと2mくらいの真直ぐなバーナーの炎のような翼がある。
そしてその目は、次第に付け根まで確かめるように。付け根には翼はなく、本当にバーナーの様。
「綺麗だよね。」
と彼女が言う。確かに言葉では綺麗としか言えない。
見たことがある。昔、同じものを見たことがある。もちろん学校の理科の実験で取り扱ったバーナーでなく同じ黒を、この方から伸びる真っ黒色の焔を。
「それが君なんだね、ジェネス君。この子と一緒にいるのはいいけど、そろそろこの子の前にも姿を見せてあげてはどうかな?」
立前さんが俺でない俺の中に言う。
「この者は、まだ我を受け入れきれていないのだ。姿は見せるにしても、まだもう少し時間が欲しい。」
口が動く。それも達者に。でも、自分とは思えない口調に声の響き、洞窟にいる様な程の響き具合だ。
「見せる気はあるんだ。」
立前さんは俺の目を見ているのに、俺に言っている気がしない話し方だ。
「我の力がもう少し程戻ってから、教査会に縛られないほどの力が溜まるまでは、まだ姿を明かさずにおりたい。」
また口が勝手に動く。
「でも、すぐそのうちに会えるんだね。その時は、しっかりと会ってみたいものだよ、君にね。」
夢はここで終わった。
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