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第五章
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「政治家の愛人だったとは」
「ホステスだったのですね」
「その職業や立場はよくある話だがな」
 今でも愛人のいる政治家はいることにはいる。ただしスキャンダルにはなる。
「それでもだ。問題はだ」
「その政治家が与党主民党の幹事長小石だったとは」
「組合のドンでもあるあの男だったのですか」
「日頃立派なことを言っているあの人だったのですか」
「そうだ。日頃野党、彼等が政権交代前からしきりに攻撃していた人間がな」
 やれモラルがどうか愛人問題がだと言っていた男がだ。実はだというのだ。
「愛人を持っていたのだ」
「そしてそうしたプレイをしていた」
「そうだったのですか」
「そうだ。人はわからないものだな」
 こう言う津上だった。ここでだ。
「表でどれだけ偉そうなことを言っていてもだ。裏ではだ」
「そうしたことをしている」
「愛人を持っていたのですか」
「しかもああした趣味があったのだ」
 真性のサディストだったというのだ。
「そして自分がそうした存在を持って趣味を持っていることを隠す為にだ」
「通報するだけして逃げていた」
「そうしていたんですか」
「そうだ。そうしていたのだ」
 こう言う津上だった。そしてだ。
 このことをだ。こう看護士達に言った。
「ただし。患者の個人情報だからだ」
「はい、他言無用ですね」
「絶対に」
「そうだ。もっともあの患者さんはマゾヒズムだが二度も見捨てられてもう小石には愛想を尽かしていてもおかしくない」
 津上はこのことも素っ気無く言った。
「それならばだ」
「あの人は小石とは離れますか」
「そうなるかも知れないんですね」
「それがどういうスキャンダルになるかまでは俺は知らない」
 冷淡なまでに淡々とした。今の津上の口調だった。
「俺は患者を助けるだけだ。医者としてな」
「ですか。それだけですか」
「ではあの患者さんがまたああいう状況になって来られたら」
「手術をして助ける。もっとももっと見られたくない、その性癖を暴露してみせた」
 今度は冷徹にこのことを話す。
「それでまだああするとは思えないがな」
「恥を知っているからですか」
「それ故にですね」
「そうだ。マゾヒズムは嗜好だがそれは過ぎると病気にもなる」
 それがまさにあの患者だというのだ。
「後は精神科に見せるといいな。既にその手配もした」
「ではあの人もですか」
「これで」
「かなりよくなる筈だ。何はともあれこれで終わりだ」
「終わりですか、これで」
「何はともあれ」
 看護士達も津上の言葉に応える。そしてだった。
 その彼等を見てだ。また言う津上だった。
「じゃあ
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