暁 〜小説投稿サイト〜
リリカルなのは〜優しき狂王〜
Vivid編
第十話〜大人〜
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――――」

「ほらよ」

 突然の背後からの声に振り向くと、放物線を描きながら自分の方に落ちてくる二つの小さな影。慌ててそれを受け止めると、それは今探していた二機のデバイスであった。

「一応お前は一般人で、事件性のある何かに巻き込まれてここにいる。だから一旦デバイスはこちらで預かっておいた」

 デバイスを投げ寄越した当人であるゲンヤは部屋の入り口近くにたっており、そう説明する。

「規則だから一応な。中身はいじっちゃいねーぞ」

「いえ…………いいのですか?」

「あん?」

「詰問をしなくて」

 そのライの言葉に一度目をパチクリとさせたゲンヤは、先ほどのようにガシガシと頭を掻くと、再びパイプ椅子に腰掛けた。

「まぁ、お前さんも一旦座れ」

「……はい」

 言われるままに先ほどまで自分が眠っていたベッドに腰掛ける。そして、ゲンヤに向き直ると、彼は先程までは彼の影で見えなかった少し大きめの紙袋をいじっていた。

「ここ最近、一般人も局員も関係なくある問題事が起こっている。そして、被害者一同その詳細は語りたくないって言いやがる」

「……」

 一瞬、ライの頭に先の戦闘で見た少年の顔を思い出す。しかし、次のゲンヤの言葉でそのイメージは霧散した。

「被害があった場所の中には監視カメラの範囲内もあった。そして判明したその襲撃犯はうちの娘たちと同じくらいの背格好の女だ」

「……なんでそんなことを僕に?」

 いじっていた紙袋から一枚のYシャツを取り出すと、ゲンヤは差し出すようにしてライに手渡す。

「お前さんの服はダメになったから代わりにこれを着ろ……話の理由か」

 受け取ったYシャツとほとんど残骸になっている私服を見比べ、ゲンヤに感謝しつつ袖に腕を通す。
 そして着替えというには簡単であるが、ライが服を着るとゲンヤは口を開いた。

「今回、お前さんを襲った奴もそうだとこれは事件になっちまうから、それの確認だ」

 もったいぶった割には普通の返答であったため、ライは肩すかしを喰らう。だが、ゲンヤにとってはこれからが本題であった。

「さっき、詰問をしなかった理由だが……まぁ、お前さんには借りがある」

「借り?」

「もう四年近くも前の話になるが――――ウチの娘たちを救ってくれたこと、感謝している」

 そう言うとゲンヤはライに頭を下げていた。
 今度は、先程のゲンヤ以上にライが目をパチクリとさせる番であった。

「えっと」

「JS事件で娘のギンガを助ける代わりにお前さんが行方不明になったと聞いた。もし、あいつがさらわれていたと思うと、こんなことを言うのも不謹慎かもしれんがゾッとする」

 そこまで言われて、ライは得心する。
 
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