暁 〜小説投稿サイト〜
リリカルなのは〜優しき狂王〜
Vivid編
第十話〜大人〜
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ないギンガであった。

「要するに、何もわからんと」

「……アハハ」

「たく」

 こういうところは姉妹でそっくりだと思いつつも、ゲンヤは視線をライの方に向ける。
 シーツで胴体が隠れているため、今直接見えるのはライの首から上だけだ。だが、首に巻かれた包帯や、特徴的な灰銀の髪に所々付着している赤黒い色で痛々しさを感じる。
 気が滅入るなと思いつつ、意識を切り替えながらゲンヤはギンガに声をかけた。

「ギンガ、コイツのことは俺に任せて今日はもう帰れ」

「え、でも」

「ウチの娘たちは少し真面目に働きすぎだ。年長者のお前が休んでる姿を見せねーと下のやつらも休みにくいだろうが」

 そこまで言われると、ギンガは渋々と退散していった。
 元来であれば仮眠室であるその部屋に残される二人。備え付けのベッド以外に特にものもないため、会話する人物がいなくなれば自然と閑散とする。
 ベッドの横で先程までギンガが座っていたパイプ椅子に今度はゲンヤが腰掛ける。その拍子にギシリと金属質な音が鳴る。その軋むような音を聞き、「次の備品の支給はいつだったか」と内心で考えるゲンヤ。
 それを思い出せず、ガシガシと以前よりも増えた白髪頭を掻く。年をとったことにため息をつきつつ、彼はライの方に向き直った。

「それで……お前さんはいつまで寝ているふりを続けるつもりだ?」

 傍から見れば眠っている人間に話しかける中年という、認知症を疑うような光景だが、そうではない。何故なら数拍おいて、眠っていたはずのライはそれが当たり前のように目を覚まし、上体を起こしたのだから。

「……下手でしたか?」

「お前さんが気付いたときに一回、そしてそれをバレないようにしようと寝たふりをしようとした時に一回、胸の上下の仕方に違和感があった。それだけだよ」

 特に面白くもない種明かしをするようにゲンヤはそう返す。
 その余裕のある態度に自分よりも年季の入った大人の凄みを、ライは肌で感じた。

「そんで、お前さんを襲った奴について喋る気はあるのか?」

「……」

 ゲンヤの当然の質問に無言で首を横に振るライ。そんなライを呆れた表情で見つつ、彼はため息を吐いた。

「八神もそうだが、今時の若い奴はどうしてこう……」

 愚痴を零しつつ、一旦ゲンヤは席を立ち部屋から出ていってしまう。
 突然、一人にされたライは当然戸惑うが、現状を把握するため今の自分を確認し始める。服は上半身を脱がされ傷のある場所を包帯で巻かれている。脱がされた服は、部屋に備え付けの机の上にあったが、血のシミや攻撃により裂傷によりもうまともには着られない状態であった。
 そこまで調べると、自身の手元に蒼月とパラディンの二機がないことに気付く。

「どこに
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