ー〈閃光〉対〈緋色〉ー
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空拳のままで地面を蹴った。 リーチ的に圧倒的に不利な状況にもかかわらず、あえて素手という選択をしたシィに僅かばかり驚きつつも、こちらに向かい、疾駆するシィに狙いを定めた。
細い刀身に眩い光が輝き、斬ッと空気を切り裂いて〈カドラブル・ペイン〉がシィに向けて放たれる。 だが、その剣先が彼女を捉える刹那、地面に這うようにその小さな体が沈み込んだ。 狙いが反れ、頬や肩に浅い裂傷を作り、シィが体勢を低くしたことで、跳ねたポニーテールを束ねていたリボンを引き裂く。 艶やかな紅髪が小さな背中に広がる。 前髪から覗く黒い大きな瞳が強い意志を湛えて、アスナを一点に見据える。 それに若干気圧されるも、刺突を放つアスナ。
「くっ、これで!」
「……武具など無粋!!」
突き出された刺突に臆することなく、踏み込むと突きの軌道を手の甲によって逸らしながら、遂に懐へと入り込んだ。 勢いを乗せた掌打が腹部へとめり込み、ズンっと重い音とともにアスナの細い体がくの字に折れ曲がる。 より確実に仕留めるために、掌打からの勢いをそのままに、アスナの横を抜け、軸足を刈り取った。 体勢は完全に崩され、前のめりになったアスナの背中に向けて、トドメの〈閃打〉が放たれーー
「にゃに?!」
ーー見事に空ぶった。
アスナは体勢が崩れるのに逆らわずに、前方に転がったことが功を奏し、まさに紙一重の差でシィの一撃を回避したのだ。
今の攻防で極度に集中力を擦り減らしたアスナを見ながら、シィはぱちくりと瞼を瞬かせた。 そんな中、疲労困ぱいの様子のアスナが一言。
「……シィちゃんがもう少し大きければ、負けてた」
「喧嘩売ってんのかな?!」
あんまりだよ! と絶叫するシィ。 だがその間にも攻撃を仕掛けないのは、二人ともかなり消耗しているからだ。 なにより、無防備な相手に勝ったところで観客たちが許さないだろう。 彼らが求めているのは、エンターテイメントなのだから。
アスナによって髪を解かれたシィはアイテムストレージから予備のリボンを取り出すと、髪を結びながら提案した。
「さて、このままグダグダするのもなんだしさ。 次でラストにしない?」
すなわち一撃勝負。 ガンマン同士の早撃ち……とは毛色は違うものの次の一撃に己の持てる全力を込めろ、ということだ。 その提案に多少、戸惑いを見せつつもアスナは首を縦に振った。 シィはうしっ、と意気込むと漆黒の大鎌が呼び出され、ドンと石突で地面を打った。 正真正銘のラストバトル。 彼女は相棒で決着をつけようとという腹づもりらしい。
もう一つ、ストレージから何かを取り出したシィが左手に掴んだソレを上空へと放り上げ、声高らかに宣言した。
「ーーーこの一輪を手向けとしよう!」
大輪をつけた真っ赤な薔薇。 空を暫く漂っ
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