ー〈閃光〉対〈緋色〉ー
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引き絞った槍に鮮烈な赤い光が宿る。 紛れもなく、上位剣技の予兆だ。 しかし、アスナの細剣スキルに上空に居る敵を迎え討つ術はなく、なによりソードスキルを放った直後ということもあり、技後硬直が彼女の動きを縛る。
「ーーーハァァァ!!」
裂帛の気合いとともに放たれたのは八つの閃光。 まさしく槍の雨となり、アスナへと降り注ぐ。 対するアスナは、体を無理やり倒し地面を転がるようにして攻撃の範囲外へと逃げ果せた。 だが、避けきれなかった槍が肩や二の腕を掠めており、彼女の被ダメージは四割へと達していた。五割まで残り一割未満。 微かなダメージでさえ、敗北へと繋がってしまう。
ゴロゴロと横転しながら、シィとは逆方向へと移動し、もう一度距離を置く。 一方で空中で身を翻しながら、軽やかに着地したシィは距離が大きく開いたのを確かめると薄く笑った。
(計画通り……)
頬についた砂を左手で拭うアスナへと狙いを定めると槍をぐっと強く握った。 軽く足を開いた状態から、体の捻りを加え大きく振りかぶった。 エネルギーが肩、腕、肘へと伝えられ、手首のスナップとともに真紅の輝きを放つ槍が投じられた。
「穿て……! ゲイッ、ボルグッ!!」
ゴウッと風を切り裂きながら飛翔する赤い槍はアスナへと一直線に飛んでいく。 滑るようにして、滑空する赤い槍はまさしく赤い流星のようだ。 寸分の狂い無くアスナの胸元へと吸い込まれるように飛来する槍は、しかし甲高い金属音と空気を震わせる振動とともに明後日の方向へと弾かれた。
「……げっ」
デュエル開始後、初めてシィに焦りの表情が浮かんだ。
狙うは心臓、必中を謳う投槍は僅かなダメージという代償を払うことによって防がれた。 だがアスナがそれによって得たアドバンテージはあまりにも大きい。 武器を失ったシィが新たな装備を出すよりも先に仕留めんと地面を蹴る。
「……これでも!」
一直線に突進してくるアスナに対し、少しでも距離を開けさせようとバックステップを踏みつつ、右手を横に一閃させた。 キラリと何かが光り、直後アスナ側でカカンと軽金属がぶつかる音が響いた。
「……飛針とは。 暗器まで用意してるのかね、彼女は」
「びっくり箱みたいなやつなんで」
ヒースクリフの問いに対し、ユーリはどこか遠いところを眺め現実逃避しながら答えた。 ユーリ曰く、今のは彼女が普段〈裁縫〉をするときに使用する縫い針らしい。
正規の利用法とは異なるものの、立派な投擲武器である。 故に投げれば、例え雀の涙ほども与えられないにせよダメージは確実に発生する。 HP的に追い込まれたアスナは防がねばならず、奇襲性も相まって突進の勢いがわずかに衰えた。
スッと息を吸い込み、止める。 シィは丹田に力を入れると徒手
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