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憑依貴族の抗運記
第6話、礼儀正しく見える男
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わざ指摘しないが、グラバック男爵が我が一門なら説得を頼んだ相手ではない。まあ、ボアテング伯爵達が説得する手間を省けたなら良しとしよう。


「おー、先日、会ったばかりだな。男爵は息災か」

「はっ、ブラウンシュヴァイク公と同席する栄誉を得たとあの後ずっとはしゃいでおります」

「そうか。それで男爵は何隻ほど出せるのか」


「二百隻です」

「二百隻か・・・男爵に礼を言っておけ。それから他の者を引き続き説得せよ」

 ちょっと少ない気がする。いくらコツコツ戦力を増強する計画とはいえ、もうちょっと景気の良い数字が欲しいところだ。何と言っても相手は百万隻一億人体制になっても油断出来ない相手だしな。

「伯父上、もう少し時間をいただきたいのです。皆、名門ブラウンシュヴァイク家の軍監を受け入れ訓練に参加するならば、万全の体制で受け入れたいと考えています。なに、一年もあれば十分です」

 フレーゲル男爵の説明を聞き、俺はどう説得して良いのかわからなくなった。だいたい一年後では貴族階級が潰滅している可能性もある・・・

「何を悠長な。金髪の孺子との戦いは何時起こるかわからなのだぞ」

「ははは。ご冗談を。あの成り上がりを打ち破ることくらい造作もないこと。この私にお申し付け下されば、いつでもやり遂げてご覧にいれます」

 フレーゲル男爵は自信満々だ。元帥という不相応な地位は姉の七光りで得ただけと、本気で信じているのだろう。

 まあ確かにラインハルは皇帝の寵姫の弟という七光り要素満載の立場だ。俺も原作を全く知らなかったら、フレーゲル男爵の見解を信じていたかもしれない。

「頼もしいことだ。それはそれとして一度直接彼等と話をしたい。皆の都合の良い日に晩餐会を開いて招待するとしよう」

「ブラウンシュヴァイク家の正式な招待ならば彼等も喜ぶでしょうが、近々ヒルデスハイム伯爵のパーティーがあります。そちらに参加してはいかがでしょう」

「カーソン?」

 俺は執事に予定を尋ねた。

「ヒルデスハイム伯爵のパーティーでしたら参加することは可能です」

「では参加しよう」

 説得という面倒な仕事をフレーゲル男爵に任せたつもりが、結局何一つ解決しないまま仕事が戻ってきた。本当に頼りになる奴だ。

「ところで伯父上。今日は掘り出し物のワインをお持ちしました。シャトーヴェスターの四百三十年物の逸品です。どうぞお納め下さい」

 フレーゲル男爵が合図を出すと、カーソンの部下の若手執事がテラスに出てきた。ワイン一本とグラスの入った駕籠を抱えた使用人を連れている。

 すぐに俺の前のテーブルにワイングラスが置かれ、カーソンがシャトーなんちゃらとかいうワインを注ぐ。

 辺りにかぐわしいワインの香りが広がった。どうやら特にテイスティングとかは無いようだ。

 俺はたしなみで香りを楽しんでから一口
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