第六話 婚姻政策その四
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「彼等も臣民です」
「それ故にですか」
「決して彼等を否定しません」
「そうなのですね」
「諸侯、都市に選ばせています」
個人単位ではないにしてもというのだ。
「旧教と新教を」
「そしてそのうえで」
「はい、帝国そして帝室に忠誠を誓わせています」
「だからですか」
「エヴァンズ家の信仰が新教でもです」
「構いませんか」
「はい」
その通りという返事だった。
「貴家にお任せします」
「そうしたお考えですか」
「ではこのことを父上にもですね」
「お話したいと思っています」
「では私が取次をしましょう」
太子は自ら大公に申し出た。
「その方がお話もしやすいでしょう」
「それでは」
「はい、エヴァンズ家は当家にとっても大切な家です」
微笑の仮面を被ってだ、太子は大公にこうも言った。
「その様に取り計らいましょう」
「ではお願いします」
大公は太子の申し出を素直に受けた、ここはその方がロートリンゲン家との関係をこじらせずそしてエヴァンズ家の信仰も守られると思ったからだ、それでだ。
ここは太子の好意にも甘えた、そして帝国の皇帝もだ。
諾としてくれた、それに対する見返りは国として見ると実にささやかなものだった。だが。
太子は話が整ってからだ、彼の側近達にここでも微笑の仮面を被って話した。
「安い、そして何でもない」
「そうしたお話でしたね」
「我々にとっては」
「特にです」
「失うものがありませんでしたね」
「確かに我が国は旧教の国だ」
そしてその旧教の擁護者とも言われている。
「しかしだ」
「それでもですね」
「新教の信者も確かに国内にいます」
「そして彼等から上納されるものを受け取っています」
「ですから否定はしていません」
「決して」
「それにだ」
太子はさらに言った。
「新教があってもいい」
「はい、法皇庁を牽制する為にも」
「彼等はあっていいですね」
「法皇庁は何かと我が国の政治に介入してきますが」
「それも法皇様御自ら」
皇帝に帝冠を授ける立場からだ。
「そうしてきますし」
「国内の諸侯もそこから反発します」
「それで、ですね」
「新教はある程度認めています」
「そのことは事実です」
「問題は帝室、そして帝室領自体が強く大きくなること」
太子は微笑の仮面を被ったままだが目はそうではなかった。
そしてその目でだ、こう言ったのだった。
「それだからこそ」
「はい、諸侯や都市が新教を選ぼうとも」
「彼等がそこから反発してもですね」
「帝室、そして帝室の力自体が彼等を凌駕していれば」
「恐ることはないですね」
「そうだ、だからだ」
それでというのだ。
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